銀河の雫
一応、気を使ってくれてんのか。
もう一押しかな。
「久しぶりに帰省して思い出しましたけど、地元に好きなとこなんて、ひとっつもないんですよ」
「そう……なんですか」
「……場面緘黙症ってご存じですか?」
これ言ったら確実に嫌われるだろうな。
年齢は四歳差ってことは、小学校は一緒だった時期があるってことだよね。
もしかしたら悪い噂で私のこと知ってたりして。
「バメン……カンモクショウ?」
「私、小学校のとき、その場面緘黙症だったんです」
裸の木々を通り抜け、暗くて長いトンネルに入った。
オレンジ色の電灯が男性と私を弱い光で照らした。
「もともと内気だったんです。外で遊ぶよりお絵描きしたり、絵本読んだりするのが好きでした」
「はい」
「自己防衛でしゃべらなくなったんです」
男性は黙ってうなずいた。
「授業中に当てられても、首を縦か横に振るだけ。それで担任から、お地蔵様とかだんまりとか呼ばれてました」
変わらず男性は、無表情のまま、まっすぐに前を向き、黙って聞いているだけだった。
「空気みたいな存在で、勉強も運動もまるでダメ。友達もあんまりいなかったな」
沈黙が流れた。
車はトンネルを抜け、石灰岩で覆われた掘削中の寒々しい山肌が見えた。
十一月の午後の弱い日差しが再び二人を照らし出す。
男性は黙りこくったまま、うなずくだけだった。
「あはは……家でも独りぼっちでね。父親はもう死んじゃったけど、当時は二号さんの家に入り浸りで」
私は半ばヤケになって一方的に話し続けた。
「母親は休日はパチンコ屋に朝から晩まで入り浸ってて。私はいつも家に独りぼっちだったんです」
「……」
もう一押しかな。
「久しぶりに帰省して思い出しましたけど、地元に好きなとこなんて、ひとっつもないんですよ」
「そう……なんですか」
「……場面緘黙症ってご存じですか?」
これ言ったら確実に嫌われるだろうな。
年齢は四歳差ってことは、小学校は一緒だった時期があるってことだよね。
もしかしたら悪い噂で私のこと知ってたりして。
「バメン……カンモクショウ?」
「私、小学校のとき、その場面緘黙症だったんです」
裸の木々を通り抜け、暗くて長いトンネルに入った。
オレンジ色の電灯が男性と私を弱い光で照らした。
「もともと内気だったんです。外で遊ぶよりお絵描きしたり、絵本読んだりするのが好きでした」
「はい」
「自己防衛でしゃべらなくなったんです」
男性は黙ってうなずいた。
「授業中に当てられても、首を縦か横に振るだけ。それで担任から、お地蔵様とかだんまりとか呼ばれてました」
変わらず男性は、無表情のまま、まっすぐに前を向き、黙って聞いているだけだった。
「空気みたいな存在で、勉強も運動もまるでダメ。友達もあんまりいなかったな」
沈黙が流れた。
車はトンネルを抜け、石灰岩で覆われた掘削中の寒々しい山肌が見えた。
十一月の午後の弱い日差しが再び二人を照らし出す。
男性は黙りこくったまま、うなずくだけだった。
「あはは……家でも独りぼっちでね。父親はもう死んじゃったけど、当時は二号さんの家に入り浸りで」
私は半ばヤケになって一方的に話し続けた。
「母親は休日はパチンコ屋に朝から晩まで入り浸ってて。私はいつも家に独りぼっちだったんです」
「……」