銀河の雫
聞いているのだろうか。
何も言葉を発しない。
さすがにドン引きか。
そりゃそうだよね。
帰った後、何でこんな育ちの悪いオンナ連れてきたんだよって、怒ってる姿が目に浮かぶ。
どうやってこの縁談を断ろうか考えてるんだろうな。
「平均の法則ってご存じですか?」
「……平均の法則?」
やっと、男性がこちらを見た。
「はい。悪いことばっかり起きた後、辻褄を合わせるみたいに、いいことが起こるみたいな」
「あぁ、なるほど」
「ずっとその平均の法則を信じてたんです」
「はい」
「今まで運を使ってこなかった分、きっといいことが起こるって自分に信じ込ませては、男に騙される繰り返しなんです。笑っちゃいますよね」
「いえ」
さらに私はまくし立てるように早口で続ける。
「自己肯定感が低いから自分を信じられなくて、相手に振り回されてばかりで」
前を見て、黙ったままうなずいて聞いている。
「分かり合える気がしなかった」
「……そう……なんですね」
「相手はなんの陰りもなくて、明るい場所にいる感じ。一緒にいても自分はそこには行けないって感じるんです」
横顔に視線を感じた。
「僕も分かります。そういう気持ち」
「いえ、あの……お優しいんですね。でも、お気遣いなく」
なおも首を横に振る。
なんか、気を使わせちゃったかな。
「あの……これが言いたかったんですけど、無理して嫌われようとしなくても大丈夫ですから」
私は核心を突く一言を放った。
「いや……そんな……」
「本当にお気遣いなく、大丈夫ですから」
「いや……でも」
あぁ、困らせてしまったかな。
でもこれで間違いなく、破談になるだろう。
車は駐車場の近くに差し掛かった。
「あっ、もう着きますね。さっきと同じ場所でいいですか」
「あ……はい」
車を駐車場に停める。
お見合い相手はシートベルトを外しながら口を開いた。
「あの……せっかくなんで、していきませんか、舟下り」
突拍子もない誘いに面食らった。