ツンデレ令嬢はモフモフの犬にしか本音が言えない〜その犬は、私のことを嫌いな婚約者でした〜
金色の毛並みの大型犬を、こっそりと部屋に連れてきた。
実は私は犬が大好きなのだが、母が苦手なために家では飼うことができなかった。
部屋に入るとワンちゃんは、戸惑ったように室内を見回している。
「ふふっ、可愛いですわ〜。あ、喉が渇いてるかもしれませんわね? ワンちゃん、ちょっと待っててね!」
私は調理場へ行き、お皿にお水を入れて部屋に戻った。ワンちゃんの前の床に置くが、首を振って飲もうとしなかった。
「あれ? 喉は渇いてないですの?」
ワンちゃんはさっきからソワソワと、落ち着きのない様子だ。
(どうしたらいいのかしら?)
犬を飼ったことのない私には、どう接したらいいのか分からない。
お父様が帰ってきたら、早く飼い主探しをお願いしたほうがいいだろう。
(だけど、今だけは、まだ私が相手をしてもいいですわよね)
実は私は、一度やってみたかったことがあった。
深呼吸して、はやる気持ちを落ち着かせる。
「えっと、ワンちゃん、おすわりできる? おすわり!」
私はワンちゃんに号令をかける。
ワンちゃんの緑色の瞳がまっすぐこちらを見て、ふっと逸らされる。
やっぱり私の言うことは聞かないのか、と思った瞬間――、スッと座った。
「わぁ、ワンちゃん、凄い! いい子ね!」
私は嬉しくて、ワンちゃんの頭を撫で回す。ワンちゃんの表情もどことなく嬉しそうだった。
気をよくした私は、座っているワンちゃんの前に手のひらを差し出す。
「じゃあ、今度はお手ですわよ? お手!」
ワンちゃんはしばらく私の手を見つめていたが、ゆっくりと手を載せた。
ぽんと手のひらに、少し硬いワンちゃんの肉球が当たる。
「わ、わ、いい子ですわ! なんていい子なんでしょう! ふふっ、可愛い〜っ!」
再びモフモフの頭を撫で回すと、後ろに投げ出された尻尾がブンブンと揺れていた。
「そうですわ! 今度はブラッシングしましょうね!」
私はドレッサーから自分のブラシを持ってきた。
ブラシを通すとふわふわとした金色の毛が、一層輝き始める。
「本当、綺麗な毛並みですわね。ちゃんと手入れされてますのね」
こんなにおとなしくて、しつけされている。どこかの貴族の飼い犬で間違いないだろう。
私が優しく背中をブラッシングをしていると、ワンちゃんは澄んだ瞳でまっすぐに私を見つめていた。
「どう? 気持ちいい?」
綺麗な金色で、澄んだ緑の瞳……。ワンちゃんを見つめていたら、ふと、グレン様を思い出した。
彼も、金髪で綺麗な緑色の瞳をしている。だけど、私を見つめる視線はいつも冷たい。眉間に皺を寄せ、表情はいつも険しかった。
さっきも上手く話せなかった。彼の視線が怖くて、私はいつも思ってもいないことを言ってしまう。
本当はグレン様と、笑い合いたいのに。
ワンちゃんがうっとりした表情を見せたので、私は微笑む。
しばらくブラッシングをしていた私は、ワンちゃんに愚痴をこぼし始める。
「私の婚約者も、ワンちゃんみたいに金色の髪に、緑色の瞳なんですわよ。でも、私のことなんて見てくれないのですわ。……目が合っても、いつも冷たく睨まれてしまって……」
そう言うとワンちゃんの身体が、ビクッと震えた。
「ん? どうしたの?」
ワンちゃんは慌てたように、首を振った。
私は優しくブラッシングを再開する。
「それなのに、他の令嬢には微笑みかけているのですわよ! 信じられます? 私には笑ってもくれないのに!」
「――キャン!」
突然ワンちゃんが小さく悲鳴を上げる。
ブラシを持つ手に力が入り、ブラシで毛を引っ張ってしまったようだ。
「あ、わ、ごめんね、ワンちゃん! 大丈夫?」
引っ張ってしまった箇所を慌ててさする。
「……でもね、ワンちゃん。……本当は、分かっているのですわ、……私が原因なことくらい。私が素直じゃなくて、可愛げがないから、グレン様が愛想つかすのも当然なのですわ……」
自分の言葉が胸を突き刺す。
本当は一緒にいたい。一緒に笑い合いたい。他の令嬢になんて、笑いかけないでほしいのに。
「本当は他の令嬢たちみたいに、甘えてみたいのに、そんな恥ずかしいことできなくて……」
グレン様を前にすると、言いたいことが何も言えなくなってしまう。
「……ねぇ、ワンちゃん。今からでも、間に合うのかしら? 私が素直に……『好き』と伝えたら、グレン様は私を見てくれる? 私を好きに……なってくれると思う……?」
(もう……遅い……? 私の言葉なんて、信じてくれないかもしれないわ……)
グレン様の冷ややかな顔を思い出して、涙が滲む。
「わ、私ったら、ワンちゃんに何を話してるのかしらね! ごめんね、ブラッシングの続きを――」
その時、ワンちゃんの顔が近づき、ペロッと私の頬を舐めた。
「え? ワンちゃん!?」
私は驚いて声を上げるが、私の涙を拭うようにペロペロと顔を舐めている。
(私が泣いていたから、慰めてくれたの?)
「ふふっ、く、くすぐったいですわよ〜。でも、ありがとう」
私はぎゅっとワンちゃんを抱きしめて、モフモフに顔をうずめた。
「ワンちゃん……、あったかい……」
その温もりに癒される。
――すると、突然、ワンちゃんの身体が白く光り始める。
(……え?)
私は何が起こっているのか分からず、その状況を見つめていると、光の中からよく知る人物が現れた。
それは――。
「ぐ、グレン様!?」
実は私は犬が大好きなのだが、母が苦手なために家では飼うことができなかった。
部屋に入るとワンちゃんは、戸惑ったように室内を見回している。
「ふふっ、可愛いですわ〜。あ、喉が渇いてるかもしれませんわね? ワンちゃん、ちょっと待っててね!」
私は調理場へ行き、お皿にお水を入れて部屋に戻った。ワンちゃんの前の床に置くが、首を振って飲もうとしなかった。
「あれ? 喉は渇いてないですの?」
ワンちゃんはさっきからソワソワと、落ち着きのない様子だ。
(どうしたらいいのかしら?)
犬を飼ったことのない私には、どう接したらいいのか分からない。
お父様が帰ってきたら、早く飼い主探しをお願いしたほうがいいだろう。
(だけど、今だけは、まだ私が相手をしてもいいですわよね)
実は私は、一度やってみたかったことがあった。
深呼吸して、はやる気持ちを落ち着かせる。
「えっと、ワンちゃん、おすわりできる? おすわり!」
私はワンちゃんに号令をかける。
ワンちゃんの緑色の瞳がまっすぐこちらを見て、ふっと逸らされる。
やっぱり私の言うことは聞かないのか、と思った瞬間――、スッと座った。
「わぁ、ワンちゃん、凄い! いい子ね!」
私は嬉しくて、ワンちゃんの頭を撫で回す。ワンちゃんの表情もどことなく嬉しそうだった。
気をよくした私は、座っているワンちゃんの前に手のひらを差し出す。
「じゃあ、今度はお手ですわよ? お手!」
ワンちゃんはしばらく私の手を見つめていたが、ゆっくりと手を載せた。
ぽんと手のひらに、少し硬いワンちゃんの肉球が当たる。
「わ、わ、いい子ですわ! なんていい子なんでしょう! ふふっ、可愛い〜っ!」
再びモフモフの頭を撫で回すと、後ろに投げ出された尻尾がブンブンと揺れていた。
「そうですわ! 今度はブラッシングしましょうね!」
私はドレッサーから自分のブラシを持ってきた。
ブラシを通すとふわふわとした金色の毛が、一層輝き始める。
「本当、綺麗な毛並みですわね。ちゃんと手入れされてますのね」
こんなにおとなしくて、しつけされている。どこかの貴族の飼い犬で間違いないだろう。
私が優しく背中をブラッシングをしていると、ワンちゃんは澄んだ瞳でまっすぐに私を見つめていた。
「どう? 気持ちいい?」
綺麗な金色で、澄んだ緑の瞳……。ワンちゃんを見つめていたら、ふと、グレン様を思い出した。
彼も、金髪で綺麗な緑色の瞳をしている。だけど、私を見つめる視線はいつも冷たい。眉間に皺を寄せ、表情はいつも険しかった。
さっきも上手く話せなかった。彼の視線が怖くて、私はいつも思ってもいないことを言ってしまう。
本当はグレン様と、笑い合いたいのに。
ワンちゃんがうっとりした表情を見せたので、私は微笑む。
しばらくブラッシングをしていた私は、ワンちゃんに愚痴をこぼし始める。
「私の婚約者も、ワンちゃんみたいに金色の髪に、緑色の瞳なんですわよ。でも、私のことなんて見てくれないのですわ。……目が合っても、いつも冷たく睨まれてしまって……」
そう言うとワンちゃんの身体が、ビクッと震えた。
「ん? どうしたの?」
ワンちゃんは慌てたように、首を振った。
私は優しくブラッシングを再開する。
「それなのに、他の令嬢には微笑みかけているのですわよ! 信じられます? 私には笑ってもくれないのに!」
「――キャン!」
突然ワンちゃんが小さく悲鳴を上げる。
ブラシを持つ手に力が入り、ブラシで毛を引っ張ってしまったようだ。
「あ、わ、ごめんね、ワンちゃん! 大丈夫?」
引っ張ってしまった箇所を慌ててさする。
「……でもね、ワンちゃん。……本当は、分かっているのですわ、……私が原因なことくらい。私が素直じゃなくて、可愛げがないから、グレン様が愛想つかすのも当然なのですわ……」
自分の言葉が胸を突き刺す。
本当は一緒にいたい。一緒に笑い合いたい。他の令嬢になんて、笑いかけないでほしいのに。
「本当は他の令嬢たちみたいに、甘えてみたいのに、そんな恥ずかしいことできなくて……」
グレン様を前にすると、言いたいことが何も言えなくなってしまう。
「……ねぇ、ワンちゃん。今からでも、間に合うのかしら? 私が素直に……『好き』と伝えたら、グレン様は私を見てくれる? 私を好きに……なってくれると思う……?」
(もう……遅い……? 私の言葉なんて、信じてくれないかもしれないわ……)
グレン様の冷ややかな顔を思い出して、涙が滲む。
「わ、私ったら、ワンちゃんに何を話してるのかしらね! ごめんね、ブラッシングの続きを――」
その時、ワンちゃんの顔が近づき、ペロッと私の頬を舐めた。
「え? ワンちゃん!?」
私は驚いて声を上げるが、私の涙を拭うようにペロペロと顔を舐めている。
(私が泣いていたから、慰めてくれたの?)
「ふふっ、く、くすぐったいですわよ〜。でも、ありがとう」
私はぎゅっとワンちゃんを抱きしめて、モフモフに顔をうずめた。
「ワンちゃん……、あったかい……」
その温もりに癒される。
――すると、突然、ワンちゃんの身体が白く光り始める。
(……え?)
私は何が起こっているのか分からず、その状況を見つめていると、光の中からよく知る人物が現れた。
それは――。
「ぐ、グレン様!?」