わすれもの

 立川に出張の日があった。
 早めに終わり、足が止まる。
 最近特に、過去を思い返す日が多くなった。
 アンニュイな日々が続く。

 南武線西国立駅が近かったので、投げやりに乗って、府中を目指した。
 府中本町駅から、府中駅へ。
 そこから東を目指す。
 線路沿いを歩く。
 途中、公園の左を曲がって歩道橋が見える。
 道路沿いの次の信号で渡る。
 裏に入ったところに、彼女は住んでいたんだ。
 どれだけぶりだろう。
 自分の覚えていた記憶のかけらは、どこにもない。
 辺りを散策してみるも、自分の記憶はどこにもなかった。
 一本裏、二本裏の道を探す。
 ない。
 こんな緩やかな坂はあったっけ?
 記憶のかけらも探せない。
 駐車場。
 たぶんここ。

 こんなことに意味はない。
 そもそも、時間がもったいない。
 だけどあの日、彼女と一緒に歩いた道は、かけがえがないものだった。

 まだ夏。
 夕暮れ。
 僕は彼女と何回会ったんだろう。
 別れ際、僕は「じゃあ、またね」と言えるようになった。
 でも。

 その日の僕はよく、口が回ったものだ。
「なんだかもったいないな」
 って。
 これは、彼女と別れるのが惜しかっただけなんだ。
 彼女はふーんと言う顔をした後、
「ノリで歩いちゃおうか?」
 と言った。
 府中から分倍河原駅まで歩くことになった。
 彼女の家からは逆方向。
 自分からしたら次の駅。
 この時の僕は、何も考えていなくて、ただの彼女のノリの良さなのかなと考えていた。

 あの時の僕を好きでいたのかな。
 もう確認することはできないけど。
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