まだ青い彼
「そうだ。事後報告になっちゃうけど、マチアプの人、会ってみたんだ。結果的にはダメだったけど時々進捗を報告し合う同志みたいな関係になった。もう二人で会うことはないと思うけど」
「そっか」

 何となく黙って行ったことが後ろめたく報告を済ませると肩の荷が下りた気持ちだった。それと、保身のような気持ち。私はちゃんと婚活もしてますよっていう……。沼にはまり切ってはいない。予防線代わりに広睦くんとの間に自ら建てた壁だ。

「さ、何食べる」
「春美さん、疲れたんじゃないですか。今週忙しかったって言ってたし」
「うん。でも今は仕事が楽しいからいい疲労感だよ」
「じゃあ、いつものところ行ってもいいかな? 」
「もちろん」
 疲れてはいるけど、さっと食べて帰るよりゆっくり話せるほうが嬉しかった。いつの間にか、広睦くんといる時間が癒しになっていることに気づいた。

「あ、そうだ。店入る前に……」

 不意に抱き寄せられて、胸で顔を打った。
 すぐに目を閉じて受け入れる。胸板の弾力のある硬さと肌の温度が薄い布越しに伝わってくる。とても心地の良いものだった。
 いつか……この子の温かさも誰かに上書きされて忘れてしまうのかな。ドキドキするのにこのままでいたい気持ちに駆られる。彼越しに胸いっぱい空気を吸い込むと顔を上げて胸を押した。

「ほらほら、行くよ」
 不服そうにする姿に安心して寂しくなって、きゅっと口角を上げる。余裕ぶってないと心が大きく揺れてしまう。
「まぁ、いいや。会ってる時は楽しまないと。ですよね」

 心を読まれたかとドキリとする。けど、私に言ったというより自分に言ったみたいで、広睦くんは広睦くんなりにこの関係が終わる覚悟を持って過ごそうとしているのだろう。私とおんなじだ。
 
 
 
 

 
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