まだ青い彼
「お疲れ、お疲れ。悪いね、時間取ってもらって。何食うか。先飲み物か」

 注文用タブレットを見ながら要領悪く落ち着かない様子に吹き出す。

「橘さん、さっきと全然違いすぎません? 仕事中はかっこいいのに」
「あのなぁ、緊張。緊張してんだよ。察しろ」
「あはは、そんな風には見えませんでしたけど。そっか、橘さんでも緊張するのかー。責任重大ですもんね」

 橘さんは一瞬ポカンとして、すぐに吹き出した。
「まあな」
「え、はい」

 何だろう。なにか間違ったんだろうか。

「まぁ、1杯くらい飲んでもいっか」
「あ、はい」
「ん。何する」

 そう言って橘さんは私にタブレットを寄越した。適当に酎ハイと食べものをタップして橘さんに返した。
 注文したものが届くまでに橘さんは手持ちぶさたに自分の組んだ指先を見ていた。

 ……話したいことがあったんじゃないのかな? 
 あ!そうか。橘さんがこっちにいた時から随分時間が経ってるし、三宅くんはもういない。橘さん気が置けない人と飲みたかったのかも。ずっと気を張っていたのかもしれない。

「橘さんって、奥さんはあちらにいらっしゃるんですよね。ってことは今は単身赴任ですか? 」
「え……単身赴任? 」
「マンスリーマンションみたいな感じですか。このプロジェクトが終わると戻られる、とか」

 橘さんは今度は確実に吹き出した。何かおかしかったのだ。え、何?首を傾げて待っていると橘さんは顔を上げ、一つ息を吐いた。

「相変わらず、お前は……無頓着というか、鈍いところがある」
「どういう……」
「俺ね、こっちに帰って来た。単身赴任じゃなく、一時的なものでもなく。帰って来たんだ」
「あ、ええ。そうですか」

 別に、私もそう思ってましたけど。帰って来たこと知ってるけど、異動だし。転勤?だし。

「……別れたんだ」

 ――…………え?

 
 
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