まだ青い彼
「まあ、親しい奴には話してるから東谷も知ってるかと思ってた。三宅にはあいつの異動前に話したから東谷にも伝わってると思ったんだけど……俺の話題は上がらなかった……ってことな。離婚、したんだよ」

 十分な間を置いて橘さんはじっと私を見つめた。

「話題、というか、その……あまり他人に軽々しく話す内容ではないと判断したんじゃないかな」

 じっと見つめる視線は外さず、橘さんはふっと表情を緩めた。

「そういうことにしておこうか」

 はー……と私も息を吐いた。あれ、何で私が怒られている気分にならなきゃならない――……

「え、は、いつ別れたんですか、いつ」
「半年……いやもうちょっと経つか」
「え、じゃあ、前に会った時はもう? 」
「そうだな」
「何で言ってくれなかった……」
 んですか、そう聞こうと思って口を噤んだ。そんないちいち報告が来る関係性でもなかった。異動だって前もって聞かされたわけじゃないし。

「前に会ったの結婚式だろ。さすがにな。他の人たちも結婚とかめでたい話題ばっかりだったし、ちょっと、なあ」

 それはそうか。おめでたい席に水を差さないように。でも、と当時を思い出す。結婚式からも会ったし三宅くんには話していたわけでしょ。私には……?
 じっと見つめてくる橘さんに、あれ?と思いながら尋ねる。

「あ、もしかして今日そのこと報告しようと声かけてくれたんですか。いいのに、そんなプライベートなこと踏み込みませんよ、私! 」

 橘さんはやっと目を逸らし、くくっと肩を震わせた。

「うん。そっか。酒も来たし、はい乾杯」
「え、はい。カンパ……イ」

 橘さんは私がグラスを持つのも待たずテーブルに置かれた私のグラスに自分のジョッキを軽くぶつけた。
 雑。雑な乾杯でチラリ橘さんがジョッキに口をつけるのを見て私もグラスに口をつけた。なんだって言うのよ、全く。
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