まだ青い彼
「俺はいいと思うけどなぁ。もう相手の年の事は十分悩んだだろう? 今の感情を優先して、結婚なんて今の感情で決めるもんだからなぁ。周りが何とかしてくれるわけでもないし」
「若い子の気持ちなんてコロコロ変わるものですよ、橘さん」

 口から本音が漏れる。橘さんはきょとんとして吹き出した。

「なんだ、東谷。向こうの心変わりが怖いのか。()()()()()()じゃないか、その子の事」
「……! 一般論で。周りの人に10年後とかに、ほらやっぱり若い男に捨てられたって言われるのも辛い……」
「はは! 芸能人でもあるまいし、ずっと“若い男と結婚した女”を追ったりしないさ。パッと見であの夫婦は10歳差だな、なんてわからないし。10年後も付き合いある()()()()なんざ、お前の事心配してる奴しかいねえよ。むしろ今の俺には10年も続いて羨ましいまであるわ! 」

 自虐を挟むからつい吹き出してしまった。

「もう、やめてくださいよ」
「なぁ、東谷。俺は、()()()()()わけだけど、どう思った? 」
「え、捨てられ……? いいえ、別に。橘さんほどの人でもプライベートは情けない部分もあったのかなって……」
「はは、うっせえわ」
「あ。ごめんなさい。そんなつもりじゃ、えっと」
「な? 別に、人の離婚にそこまで何も考えないだろう。色々あったんだなーって。原因は向こうが若すぎたからでも、心変わりしたわけでもないかもしれないだろ」
「でも、私は若い彼を諭す立場なのに。大人になって何をしてるんだろうって……自己嫌悪で。いつも過去の恋愛を後悔してばかりだし、私、どうしたいんだろう」
「東谷、今の自分が何をしたいか知ることは、今のお前を否定することじゃないぞ。過去の後悔を今引きずると未来でまた過去に後悔することになるだろう」
「……はい。ありがとうございます」
「頑張りがいがある、ともいう。好きだろ、東谷。こういう逆境みたいな」
「ちょ、プライベートではヤですよ! 」
「努力とコミュニケーション」
「はい、胸に刻みます」
「あー、説教くさくなんの何でだよ。結婚はねぇ、いいもんだよ。色々あって良くないこともいっぱいあってしんどくていいこともあって楽しくて。なんかまぁ、何とかやってく。いいもんだ。俺はそう思う」

 橘さんは焦点の合ってない目で遠くを見るように呟いた。
 俺が言うなよ……と言って私に焦点を合わせ、破顔した。私もつられて笑ってしまった。

 
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