まだ青い彼
 ――橘さんの気持ち、ちょっとわかるな。
 仕事が忙しいと、他の事後回しにしちゃう。最優先で時間との戦いだって言ってる婚活でさえ一旦考えられなくなってしまうもの……。結婚してたら余計に生活を後回しにしてたんじゃひずみが生まれちゃうよね。けどさ、家族って意識せずに一番甘えが出てしまう相手だと思う。一番大事にしなきゃならないの人なのに。

 や、でもな。元奥さん、さすがに別れて1年経ってないのに再婚は早すぎない?どうやってお相手と出会ったんだろう。仕事が忙しい時期に?子供は望まないってこと?それなら尚更時間かけられるはずだから、やっぱり子供が欲しいのかな。

 想像の範疇を出ないもやもやに気持ちがぐるぐるしていた。
 橘さんも『俺も人の事言えないから』言ってたけ……ど。あ、それ、もしかして私のこと言ってた?離婚してそんなに経ってないのに私と結婚したいと思ってくれたってこと?
 今になって言葉の意味がわかり、私は一人赤面する。

 ああ、もう。
 私は色々鈍くて困る。タイミングを逃した過去が多すぎて後悔したはずなのに。未来が今の私の選択で全く別のものになる。
 自分の人生に責任重大だよ。頭と心と、意見が合ってくれたらいいのに。

 会社を出てしばらくすると遠目に私を待つ広睦くんの姿が見えわずかに緊張する。絵になるなぁと見とれてしまう。気だるそうに一点を見つめる瞳が私を認識するとパッと表情が変わった。

 この近い距離を瞬発的に駆け寄る姿に胸がぎゅっと掴まれたようになる。
「春美さん、お疲れ様」
 私の手から荷物を取ると空いた手を取って歩き出した。

 かわいいなぁ。愛おしいってこのことだろうか。うっかりじんわり来てしまった。
 罪悪感、背徳感。制限のある関係。この感情を作るのは何だろう……。
< 131 / 160 >

この作品をシェア

pagetop