まだ青い彼
「仕事、忙しかった? 」

 いつものお店、席に着き適当に注文を終えると広睦くんは私の顔を窺うように尋ねた。

「うーん。しばらくはね。でも楽しいよ。楽しい側の疲労」
「そっか」
 まだじっと見てくる。
「どうかした? 」
「婚活、何か進展あったら報告してくれるって言いましたよね」
「……え、うん。別に何も無いよ。はは、止まったまんまだ」
「じゃあ、何かあったのはあっちか」

 うーんと考える素振りをして言う。その意味がわからず眉を寄せた。

「あっち、って? 」
()()()

 ハッっと息を飲んだ。

「何で……」
「ああ、やっぱり。告白でもされた? あの人既婚者だって聞いてたけど」
「それが、……少し前に離婚してたみたい。私は知らなかったんだけど」

 嘘を吐いたわけではないけど気まずい。何より広睦くんが『橘さん』を認識していたことに驚く。
「ふーん、なるほどね」
 広睦くんは合点がいったとばかり親指で顎を撫でた。

「どうして、そう思ったの」
「春美さん、さっきからうしろめたいような顔してる。仕事で疲れてるのかと思ったけど、何でもないふりしてるってことは俺との関係を今日で最後にするくらいの決定的なことがあったわけじゃないのかなって」
 驚いて口を覆った。この一瞬だけでここまで判断されたことに驚く。

「でも、どうして橘さんだって思ったの」

 広睦くんは不機嫌そうにため息を吐いた。

「あのね。あの人と会った時の目かな」
「目……そんなのでわかるもの? 」
「わかっちゃったんだよな。普通年下の男、こんな学生。しかも親戚の子なんてどーもくらいで終わるんだよ。でもあの人はあの瞬間で()()()()俺の事見たんだ。ちゃんと男を見る目だった。向こうも気づいてんじゃない? 俺と春美さんが何かあるって。俺も探ったのバレてただろうしな」

 その通りで驚く、橘さんも、広睦くんも……。
 
 
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