まだ青い彼
「あー……こういうのってなんでわかっちゃうんだろうね」

 いつもはガツガツ美味しそうに食べるお皿を前に空の取り皿を見つめている。結論を出していない私は慰めるのも違うしなだめても仕方なくただ居心地悪く食事を勧めるしかなかった。

「ほら、お料理冷めちゃうから食べない? 」
「……何で向こうに行かないの。完璧な人でしょう、春美さんにとって」
「まだ、橘さんの気持ちを知ったばかりで感情の折り合いがつかないよ」
「感情の折り合い? へえそういうのあるんだ」
「少し、考えたい」
「ふうん。時間、無いんじゃなかったの。この何か月も俺を待たして考えて答えは出ない、なるほど。30代の大事な時間を使えないとおっしゃったけど、ご自分で無駄になさったんですね、3か月()。それで、大事なのは自分の時間だけだと思ってる。20代だって無限じゃないですからね。いたいけな若者の恋心踏みにじらないでもらえますか」

 広睦くんの言葉にいちいち棘があって、でも言われても仕方がない事をしてるんだってことわかってる。無駄に引っ張るのが残酷だってことも。

「ごめん、急ぐから、待って……ほしい」

 ここではっきりと言うことも言えず申し訳ないばかりだ。
 カチャ、と音がする。広睦くんは何も言わず目の前の食事に手を付けた。

「しんどいんですけど……」
「うん。ごめん」
「でも、まだ大丈夫なんだってホッともしてる」

 いつもみたいに美味しそうに食べず、ゆっくり口に運んでいる。罪悪感で胸が痛い。それなら開放してあげたらいいのに、その一言が出てこなかった。

「ごめんなさい」

 しばらく沈黙が続いた。

「やー、いいよ。そういう約束だったのに、文句言ってしまった。……ごめん」
 不意に広睦くんが箸を止めた。
「え? 」

ごめん?謝らなきゃないらないのは私の方で。何で?

「せっかくのデートで不機嫌さらすのは、良くない。だから年下扱いされるんだ、俺」
「そんなこと無いよ。謝んなきゃならないのは私の方で……」

 前のめりになった私を広睦くんは手で制した。

「はは、拗ねるとか、ださ。ははは、告られんのなんて不可抗力だよな」
「そんな……」

 広睦くんは二ッと不敵に笑った。

「俺もそりゃもうしょっちゅう告られる側だからわかるんだ」

 ……そうでしょうけども。

 
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