まだ青い彼
「なぁ、今日のあれ何なの。お偉いさん方参加するっていうからまとめてきたのに、紙で出せつって紙で出したら実物見てみないとって言うから、現物用意したら印刷じゃ色の違いが――とか言い出して全員眼鏡上にあげたり下げたり。老眼なんかいってなぁ。挙句、一部の上の人が帰った後、ずっと何も言わず静かだった人が急に元気になって『いつも上の人たちの意見ばかり気にしてちゃじゃダメだ。我々若い力で変えていこう! 』って。あれ言った人40代後半なんだけど、若い世代って何歳なの。なんで自分若手側なんだよ」

 ぶふーっとパスタ屋さんで吹き出してしまった。

「橘さん、悪意、悪意ありますって」
「いやさ、こんな実りない時間のために全員集めて手止めさせられたんだぜ。信じられない」
「途中から橘さんが切り上げようとしていたのが痛いほど伝わりました」
「そりゃそうだよ、昼跨がれたらたまんねーって。せっかくのランチデート」
「……はい? 」
「うん。で、どうだった()()()()()男とのデートは」
「別に……普通です」
「ふうん。そっか。別れようと思わなかったんだ」
「え、すぐには」

 別れようとは思っているけど、すぐには……とは言い辛く、目が泳いでしまう。

「そっか、俺の告白受けてすぐに婚活終了、とは思わなかったってことか。残念」
「そんな急には……。確かに婚活は時間との戦いもありますけど」
「俺の事をそういう目で見たことなかった? 」
「お昼に話す内容ではないのでは……」
「はは、まぁ、いいじゃん。夜誘うのはなかなかハードル高いし」
「……うん。実は昔、橘さんが私の教育係してくれてた頃、憧れてました」

 もう過去の事だし、と口に出すと橘さんはすごく驚いた顔をしてゴホンと咳払いをした。

「じゃあ、何。あの頃……」
「まあそうですね。両想いだった」
「ふ、はははは! 言い方。幼い表現だな」
「そうじゃないですか。実際幼かったんだし」
 
 恥ずかしくて言い返すと、橘さんは真顔になってそれから微笑んだ。
 
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