まだ青い彼
 ――――広睦くんとの約束の土曜日を数日後に控えていた。

 その日、別れを伝えるつもりだった。他に好きな人が出来たわけでも、婚活が成功したわけでもない。約束は違うけどもう一緒に入られない……。
 結局、好きだけで選べなかった。

 この間、橘さんとは何度か昼休憩を一緒にとったり、仕事帰りに飲んで帰ったりもした。
 橘さんはいつも通り、先輩として接してくれた。時々確認するように意味深に微笑んでは私を無駄にドキドキさせた。……無かったことにしてませんてば。だけど……。
 
 『既に信頼関係が確立しているちょうどいい年齢の独身男性がパッと目の前に現れた』のに『なーんにも悩まずにさっと解決』しなかった。
 完璧な相手、完璧な条件。信頼、尊敬。
 それをもってしても橘さんと付き合おうという気が起きなかったのだ。それが答えだと思う。

 ――私は広睦くんの事が好きだ。

 だから一緒にいると手離せなくなってしまう。広睦くんの相手は私じゃないと思う。
 結婚に焦っているけど、今すぐ結婚したいくらいだけど、この気持ちのまま誰かと結婚は出来ないと思う。広睦くんと出会ってから後悔と自己嫌悪の繰り返しでわかっているのに正しい判断が出来ない。これ以上自分を嫌いになりたくなかった。


 一旦一人になって、仕事に一点集中。目の前のやることに全力注いで落ち着いたら動き出そう。こんなんじゃダメだ。しっかりしなきゃ。だから、決めた。

 ――――――

 残業もなく帰れた日だった。まだ外も十分に明るく寄り道を決めた。
 今週、広睦くんと会ってないなぁ。と気づけばあの子の事を考えてしまっていた。いつもは約束までにもう1、2回ご飯食べに行くくらいはするのに。忙しいのかもしれないな、広睦くんも。バイトもそろそろやめて海外旅行に行くんだっけ。いいなぁ、学生の頃にしかできないよね……。

 ふと、遠くに今考えていた人の姿が見えた。
 遠目の後ろ姿でも広睦くんだって気づくようになった自分に苦笑いする。
 
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