まだ青い彼
 ――広睦くんは同い年くらいの友達と一緒だった。

 広睦くんには広睦くんの世界があって……。私がいなくても楽しくやっている。
 ああ、若いな、若い。私のいるフィールドと全然違う。これ前も思ったっけ、前も思って落ち込んでそれでもまだ一緒にいたんだ、私……。バカだな。一目瞭然なのに。

 声……かけない方がいいよね。
 久しぶりに感じる広睦くんの姿を見ておきたくて向こうに気づかれないように少し近づいた。かっこいいんだよなぁ。別れると決めてから妙に感傷的でちょっとしたことも覚えていたくなる。出会った頃からの思い出を回想することも多くなった。

 私の方を向かない広睦くんは他人だった頃のようで、電車で見かけるだけだった時の彼と重なる。大人っぽい……かな。もう大学生にしか見えないけど。髪が伸びたな。染めないのね。今時の子は染めないのかな。周りの子も見ても髪を染めてる子はいなかった。パーマは当ててるし真面目……とは違うから今のトレンドは黒髪なのかしら……。私の時は、ほとんど染めてたなぁ。そんなことを思いながら見つめていた。

 ポケットに無造作に入れられた手、時々出しては顔にかかった髪を避ける。
 大学生くらいの男の子の団体って、特に彼は気後れするくらい見た目が素敵だから近寄りがたく感じる。ちょっと不敵なイケイケ感があって怖く感じる。けど……誰とも知れない私の忘れ物をベンチで待ってくれてたっけ。結局彼は覚えていなかったけど。


「……………………いや。俺、彼女いるからこの後は合流しない」
 
 先の会話は聞こえなかったけど、広睦くんの口から『彼女』という言葉が出てきて耳をそばだててしまった。私の話題だ――。

「え、いいんじゃないの。彼女年上だろ、気にする? 」
「俺が気にするんだよ、今失敗できない」

 俺が気にするという言葉は嬉しかったけど『失敗』って……?
 盗み聞きなんてよくないのはわかっていて早くいかなきゃならないのに動けないでいた。今更彼が私をどう思っているのか知りたいだなんて……。

 
 
< 140 / 160 >

この作品をシェア

pagetop