まだ青い彼
「なに、彼女年上? 七瀬って結構その辺真面目なんだ」
 事情知らないだろう子が口を挟む。

「違うって、こいつ30超えてるくらいのすっげ年上と付き合ってんの」
「え、マジで。ばばぁ……や、悪い。熟女好き? みたいな」

 微妙に傷ついたけどこの子たちから見ると事実で、その反応には慣れたものだった。

「いやいやそうじゃなく。こいつ悪いんだって。復讐だってよ、復讐」

 ドクンと心臓が嫌な音を立てる。
 
「復讐? なんだよ。熟女に村でも焼かれたんか」
「はははは! そうかもな、そう。今の彼女に前の彼女と同じ理由で振られそうになったから、イラァってきて惚れるだけ惚れさせて婚期逃させて捨てるっつー復讐中らしい」
「はあ、マジ? 」
「……まあ、だいたい」
 広睦くんは抑揚なく言った。

「やばいな、お前」
「そうヤバいんだよ、俺」

 広睦くんは吐き捨てるようにそう言う。

「で、うまくいくのか、そんなの」

 その問いかけには肩をすくめてみせた。

「とにかく、俺は彼女最優先なんで帰るわ」

 そう言って広睦くんは身体を翻し、私の方を向いた。
 目の前に歩み出た私の前に。

 後ろの二人が、誰?と呟き、やばと言って目を逸らすとゆっくりその場から離れていった。

 広睦くんは私を見ると驚くでも焦るでもなく何も映さないような瞳で私を見ていた。

「怒らないんですか」
「言い訳はしないのね? 」

 私が問うとスッと私の横をすり抜けて行った。

「ありませんよ。言い訳なんて」

 私だって、怒れない。怒る理由がなかった。
 それに……何だろう。ショックだとか騙されたという気持ちが不思議と湧いてこなかった。始まりから今まで思い返すと、どこかで“やっぱり”という気持ちがあった。


 ――――振るのは私じゃなかった、終わるという結果は同じなのだからどちらでもいいだろう。むしろこっちのほうが良かったとすら思っている。

 
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