まだ青い彼
 ――季節は夏が終わり秋に変わっていた。

 今年の夏も暑かったねと人は口々に言うけど私はこの夏を見送っていた。

 取り組んでいたプロジェクトの区切りがついた。誰かの案が採用されたのではなく、色合いやデザインやそれぞれの案が採用され微調整して決定した。
 沸き立つ気持ちで販促へと回した。SNSでは意味深にデザインのリニューアルを告知し、この冬店頭に並ぶ。

 やり切った、そう思っているのは私だけでなく、参加したメンバーも、もちろん橘さんもだ。

「打ち上げ」
「はい」

 販売後、会社として立食パーティーがホテルであるらしいけど一先ずメンバーで飲もうかという話になった。

「我が子が進級する時の気持ち。新しい学校でやっていけるのかな、あの子」
「大丈夫よ、私の子だもの」
「そうだよ、あんなにしっかり育てたんだ」

 何人かが乗って笑い声が起きた。

「いや、ほんと発売まで胃が痛いっすわ」
「わかる。ずっと緊張してる」
「達成感半端ないね」
「ほんと、多分今までの仕事で一番大きな案件だった」
 
 一通り心境を分かち合ってお互いの頑張りを称えた。

 黙って聞き役に徹していた橘さんがいつの間にか横に座っていた。

「東谷もお疲れ」
「あ、いえ。橘さんも、お疲れ様です」
「……元気か? 」
「まぁ、それなりに? 」
「はは、なんだそれ。」

 私を心配してくれたのだろう。

「少しづつ、前を向いて歩く……つもりです」
「おー? 」

 橘さんはほんとかよ、と言わんばかりに片眉を上げた。

「仕事があって良かったです。しかもいい結果だせて」
「まだ反応これからだけど。認知してかなきゃなあ」
「そうですけど、大丈夫だと思ってます。私は」
「俺も大丈夫だと思ってるよ。お前は」
「え、私? 」

 橘さんはふっと笑って私の頭を軽く撫でると、また他の人たちに合流していった。

 
 
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