まだ青い彼
 熱を孕んだような目に涙が滲んでいる。
「頼むよ、ちゃんと、見て。俺の気持ちを軽く扱わないで」

 広睦くんとの日々が次々と脳裏に浮かぶ。
 でも、あの時は……。それから、あの時だって……。

 パチパチと瞬きして広睦くんの顔をよく見ようとする。
 自分に向けられる相手の目が自分をどう思っているか言葉にされるよりわかる時がある……。夢中になっている相手に向ける目には……。

「あなたは確かに……私を……。広睦くん、私を好きになったのね? 」

 途中まではなんでそんなに私にこだわるのって思っていた。ムキになってるような嫌がらせに近い行動はいつしか、何とか振り向かせたい、気にかけて欲しい、そんな態度に変わった。

「そうだよ……」
 恨めしそうに、でもはにかむように広睦くんが頷いた。

「そうだよ、振り向かせたいのは仕返しじゃなくて、俺の方を見て欲しいからだって気づいた時には好きになってた。結局さ、好きになったら俺が振られるんだ」

 私が振ったことになるの、か……?
 別れなきゃならないのに煮え切らなかったのは私の方だ。 顔を歪ませる広睦くんの髪にそっと触れる。広睦くんがその手に自分の手を重ね、目を閉じた。わずかに唇が震えている。

「ね、聞かせて。広睦くんの言い訳」

 そう言うと綺麗な目を開き、うんと頷いた。

「元カノ、入籍した人の事だけど。あの人と別れてからも何人か彼女が出来たんだ。けど、だいたい向こうから熱烈に言い寄ってきてそのくせ『思った人じゃない』とかすぐに終わって。俺とつき合うことをステイタスみたいに友達に会わせる人、SNSに乗せる人。そんなのが続いて。イライラしてた。みんな俺の気持ちなんてどうでもいいんだよ。極めつけ、元カノな。あの人、その後どうなったと思う? ……最近結婚したらしいんだけど、相手俺の2つ上だって。結局俺と年齢2個しかかわんない相手と結婚したんだぜ? 俺が振られたのって何だったの」

 広睦くんは乱雑に髪をかき上げ、ため息を吐いた。
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