まだ青い彼
「ううん。私の方こそ、傷つけてごめんなさい。広睦くんの言う通りだと思う。あなたの気持ちを軽く扱ってしまった。私じゃなくていいでしょっていつも思っていた」

 だって、こんなに素敵なんだから、もっとふさわしい子がいるでしょってずっと思っていた。

 「……聞いてくれてありがとう、俺の……言い訳」

 そう言って、立ち上がろうとする広睦くんの肘あたりを持って座らせようとする。なに?とばかり首を傾げる広睦くんに、私もまだ言わなきゃならないことがある。
 
「私も、聞いて欲しいことがある」
 そう言うと、広睦くんはしっかりと座り直した。

「私も、先を考えた時、ずっと私が振られる心配をしてた。11も下の男の子に夢中になって捨てられるなんて、みっともないとか恥ずかしいとかそんなプライドもあったと思う。でもそれだけじゃなくて。若くて可愛い子がきたら太刀打ちできないって不安と、若くてかっこいいあなたが私みたいな年も上の女に本気になるはずが無いっていう疑いと、 自分が21歳の時にした恋がもうとっくに続いていないことと、もう一度あの時の彼に会ったとしても絶対に好きにはならないし、もう思い出しもしないくらいの人なの。11年ってそのくらい価値観が変わる歳月だっていういう経験から、あなたの未来の感情を疑って。でも……振られる怖さって相手の事好きじゃないと成り立たない」
「うん、そうだな。正直ここ最近の彼女たちには振られたって事実と苛立ちしか残っていない」
「……だから……あの、」

 ふう、と一息置いた。緊張する。気持ちを伝えるのは、いくつになっても緊張する。
 眉を寄せていた広睦くんの綺麗な目が見開かれた。

「広睦くんに振られるのが怖かった」

 ゆっくりと私に伸ばされた手が私を包み込む。
 腕が震えている。
「本当に? 春美さん、俺の事、好きってこと……? 」
 
 広睦くんの胸の中でこくこくと頷くと広睦くんの腕に力がこもる。私の肩に預けた顔が近くて緊張するけど、体温に安心する。
< 148 / 160 >

この作品をシェア

pagetop