まだ青い彼
「広睦くん、覚えてたの」
 そう聞いた私に広睦くんが驚く。

「え、春美さん、覚えてるの」
「覚えてるよ。あの日私はあなたを好きになったんだから」
「ああ、見た目、だけね」
「……まぁ、最初は。ごめんってば」
「いいけど。覚えてたんだ。いや、電車で何回か会ったのに全く知らんぷりだったから『あー……そんな感じか』ってがっかりしてたら急に告白してくるし、ここでのことは覚えてないんだと思って」
「今だから言うけど。電車で見かけた時から素敵だなと思っていて。ここでのことは後で電車の人だって気づいて、あの時の広睦くんの感じから広睦くんから声をかけてくれるのを期待したんだけど、忘れてそうだったから、悩んで悩んで、勇気を出してみたら……」
「思った感じでも年齢でもなかった、と」
「だからー、もう許して」
「ははは! 」

 広睦くんは声をあげて笑って私の手をぎゅっと握った。

「良い人だよね、広睦くんは。私にもちゃんと優しかったよ。手を出さなかったのも良心でしょ」
「……あー、買いかぶり過ぎ。これからガンガンいくし」
「私も、もう不安を広睦くんに押し付けるのはやめる」
「大人の女性から見たら子供みたいなもんなんだろうね。実際子供っぽいし。でも子供だからって傷つかないわけじゃない。若くて可愛い子とやらが目の前に現れてもこれまでの思い出や歩んできた道があって、相手との信頼関係とか周りの人との関係ぶち壊してまでそっちにいくほど馬鹿じゃない。逆に春美さんは頼りがいのある大人な男が現れたら好きになるのかって疑われるのきついだろ」
「そうだね。お互い、信じなきゃね」
「一途だよ、俺」
「私も、重いよ。そうだ、言っとかないと。私結婚したいから。結婚しないなら別れるから」
「ははははは! 俺のセリフだ」

 もう決めたからには周りの目なんて周りの言葉なんて気にしない。そう腹をくくった。
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