まだ青い彼
エピローグ1
「いやさ、別にいいんですけどね。何でしょう、この気持ち」
「あーな。わかるわ。俺も元奥さんの再婚飲み込むのに時間かかった。気持ちがあるわけじゃなくても。そういうもんだ」

 休憩中、コンビニで買ったコーヒーを片手に歩きながら橘さんに愚痴る。

 私の一番最近の元カレ――結婚はまだ早いかなと別れた彼が若い子とデキ婚したのだ。それをわざわざ、今、ご丁寧にメッセージで報告してきたことを我慢できずに橘さんに愚痴っていた。

「わざわざ言いたい心境って何でしょう。既読無視でいいですよね。ああ、でもそうすると悔しいみたいだし。でも私の近況なんて教えたくないしな」
「いや、心境は俺にもわからん。無視でいい、無視で。にしても人生ってわからんもんだよな、東谷。お前だってあんなイケメンと結婚する予定なかっただろ」
 “あんな年下”じゃなく“あんなイケメン”て言ってくれるところに橘さんの愛を感じて微笑む。

「あ、まあ。はい。今私が幸せじゃなかったらもっと荒れてた自覚あります」
「幸せ……って俺に言うかね」

 橘さんは肩をすくめたけど、私が顔で抗議すると苦笑いを返して来た。大して困ってないくせに、と心の中で毒づく。急に橘さんがバッと後ろを振り向き「先に帰るわ」と急ぎ足で過ぎて行った。おかしくて吹き出す。

 しばらくすると、沢田さんが私に並んだ。

「東谷さん、橘さん見ませんでした? 」
「あー、えっと、さっき会社に戻って行ったけど」
「えー、もう。朝から送ったメッセージまだ未読ってわざとですかね」
「プライベートは私もよく……」
「まあ、いいや。まだ休憩時間残ってるし、探してきまーす」

 沢田さんはさっきの橘さんより早く会社のビルへと走って行った。あの速さでは沢田さんが追いつくな、などと思う。

 にしても、人生ってわからないものですね、橘さん。
 

 
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