まだ青い彼
「わかった」
 彼が遮るから、最後まで言えなかった。

 わかったって、どういうことだろう。
 店から出て最寄り駅まで歩く。歩くスピードは随分とゆっくりだ。不意に手を取られてビクリとしてしまった。見上げると彼はにっこり笑う。
 ……う、何だろう。調子狂う。

「週明けに、絶対に疲れを残したくないんだね」
「そうなの。でもたまには出かけたりはしたいよ。ほんとにたまにだけど。連休とかあれば」
「ふ、わがまま」
「ごめん……」

 この子には今日どこか行ったりする計画があったかもしれない。でも、それを聞いちゃうとそうしなきゃならなくなるのもなぁ、と黙っていた。


「ごめん」
 悪かったかなぁ、ともう一度謝罪を口にした。

「何が? 」
「昨日、起こさなかったし。結局あなたにメリットなかったでしょう? 」
「メリット……? 」
「そう、あの、えーっと、すっきりもしなかったし」

 濁して言うと、彼はハッと目を見開いた。

「はぁ? 」
「いや、だって、ほら。したくて無理にでも会ったのかなって」

 今度は思いっきり顔をしかめた。

「いやいや、俺の脳みそチ〇コかよ! 」

 あまりの言葉に慌てて彼の口を押えた。

「ちょっと、なんてことを言うのよ。声、声ってば!」

 私の手を振り払ってギッと睨む。

「なんてこと言ったのはそっちだろ! 俺の純粋な気持ちを性欲処理変換しやがって! 」

 また彼の口を押えようとする私の手を掴むと、彼はくっくと肩を揺らした。

「ごめん、ごめんって。でもほら若さってそうなのかなって」
「まだ言うかぁ。まあ、したかったけど。春美ちゃんとね。んとにひでえな。すっかり虫扱いだぜ」
「怒ってるのに笑ってくれるの」
「だって、仕方がないだろう。こういうの、惚れた方が負けって言うし」

 私は驚いてハッと手を離した。

「あなた、私のこと……好きなの? 」

 七瀬広睦は数秒私を見つめて、それはそれは綺麗な顔で微笑んだ。

「さあ」
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