まだ青い彼
 そりゃあさ、友達に『彼女』だって紹介してくれるとは思ってなかったけど。私を見つけて駆け寄ってくれるとも思っていなかったけど。
 虚しさが胸をかすめる。

 あれが普段の七瀬くんで、普段の彼の居場所。
 あのグループには短いトップスから華奢なお腹が出た女の子もいた。私の友人たちとは全然違う……。私はもう一生人前でお腹は出せないな……。


 ……何してるんだろう。重くなった足を引きずるように歩いた。何で落ち込んでるんだろう、私。


 せっかくだから、何か美味しい物でも食べて帰ろうかと思ってたのに。
 何か買って帰らないと家に何もないのに。

 街中のベンチに意味もなく座る。
 用事もなく、気分転換にもならないなら帰るべきなのに。明日は仕事なのに。


「うぉい、明日仕事だから家にいたいんじゃなかったんですかぁ? 」

 上から声がして飛び上がった。

「七瀬、くん」
「あー、まぁそうだけど。誰か待ってるわけ? 」
「ううん、ちょっとウロウロしたくなって家出て来たんだけど、疲れて休憩ちゅう……」

 何で言い訳がましくなるんだろう。だって彼の目がじっとりしているから。

「んじゃあ、一人? 今からも」
「うん。あ、七瀬くんは友達」
「彼女見つけたから帰るつって別れたけど」

 親指の先で指した方向を見るとさっきのコたちがこっちを見ていて、七瀬くんは手で追い払うジェスチャーをした。

「え、彼女……」

 そう溢すとイラッとした表情をした。

「んだよ、彼女だろうがよ」
「あ、それ、なんだけど。言ったの、友達に」
「言うよ、何で」
「恥ずかしくないのかなって」

 七瀬くんは大きなため息を吐いた。

「なぁ、暇なら会わねぇ? どうかな。今の時期は特に。まだ全然コミュニケーションとれてないじゃん」
「どうして私と付き合うのかわからないよ。無かったことにすればいいのに、どうしてあなたが引き留めるの」


 そうだ、最初からこう聞けばよかったんだ。

 
< 55 / 160 >

この作品をシェア

pagetop