まだ青い彼
「先に声かけてきたのはそっちでしょ」
「だからって。こんなに年下だって思わなかったって言ったでしょ」
「そう、年下じゃダメな理由が結婚なら俺は考えてるって言ってる」
「そうじゃなくて………」
 全然通じなくて困る。

「学生だってもうあとちょっとで終わりじゃん。同じ社会人になるわけだろ」
「そうじゃない。そうじゃないの。どうして同い年くらいの子と付き合わないのって」
「だからー、そっちが告白してきたからじゃん。俺に! 」
「そうだよ。でも、じゃあなかったことにしてって言ってるじゃない」
「……勝手だな。勝手に俺の年勘違いして勝手になかったことにする? それって()()のすることなのか? 」
「責任とれってこと? 」
「そだな」
「それって、何の責任なの。あなたなら、告白なんてしょっちゅうされてるだろうし。その子たちはずっとあなたのことを好きでいなきゃ駄目なわけじゃないでしょ。何年も付き合って私に気持ちがあるなら責任も感じるけど……どうして欲しいの、私に」

 七瀬くんは苛立ちを思いっきり顔に出した。

「わかったよ、OK、OK。別れよ。それでいい? 」
「……うん。ごめん」
「ちっ、腑に落ちねー。俺、30越えてるように見えるか? 」
「その、冷静に考えたら見えないんだけど、私も恋は盲目的な感じになってたし、何よりあなた私に敬語使わなかったから勝手に同い年くらいかなって思い込んじゃって。ただの不敬な子供……」

 まずい。正直に言い過ぎた。

「ふ、ははは。マジでイラつくな。確かに、普段は()()()()()敬語なんだけどな、俺」

 じゃあ、あの時は単に敬語を使わなかっただけだったってこと。
 どこか、吹っ切れたように七瀬くんは笑った。それから、真顔になると私を見据えた。

「え、何? どうしたの」
()()()()。俺さ、これから春美さんにちゃんと敬語使うよ。あと、とりあえず別れてあげる。それとさ、結婚したいって言うけど相手ってそう簡単には見つからないだろ。だから、フリーなうちは俺とも遊んでよ」
「ええ? 」

 何を言ってるの?

「なんだかんだ言って、俺を引き離せないの知ってますからね」

 そう言ってな七瀬広睦はまたふんわりとだけど、不敵に笑った。
 
< 56 / 160 >

この作品をシェア

pagetop