まだ青い彼
「少し下くらいならね。若すぎるよ、遊びたい盛りでしょ。支えた時代忘れて若い相手に乗り換えられる可能性ある」
「あー、こっちがどんどん老いるのに向こうは男盛りになるわけか。そうじゃない人もいるだろうけどね」

 今はいい、けど……結婚とは先を考えることだから……。

 そうだよね。
 困っている、なんて思いながらどこかで浮かれていたのだと思い知らされた。それから、32歳の現実と。
 結婚して、子供がいて、2人目の子どももいて。家庭を築いて、仕事ではキャリアを築いて……。

「学生は学生と恋愛しといたらいいんだよ」

 仁香の言葉がしっくりする。そう、街で見かけたあの子は学生らしく、横にいた女の子もとてもかわいかった。あれがあの子の居場所。私は何とも言えない気持ちで二人とのランチを終えた。
「結局、沼ってるなら付き合ってみるのもありだと思うよ、私は。遠回りかもしれないけど、そうしないと踏ん切りつかないこともあるし」
 

 『なんだかんだ言って、俺を引き離せないの知ってますからね』
 
 あの子、ああ言ったけどここ数週間は音沙汰がない。

『結婚したいって言うけど相手ってそう簡単には見つからないだろ。だから、フリーなうちは俺とも遊んでよ』

 俺()()遊んでっていうくらいだからやっぱり、気まぐれ、暇つぶしみたいなものだったんだろうな。たまには畑違いの女と遊んで見たくなったんだろうか。私が声をかけたことでそんな興味が出たのかもしれない。

 ――忘れよう。
 何もなかったんだから。

 あの子に告白する前のモチベーションを思い出して……。早く私から離れて欲しいと思いながらも、自分へ向けられる好奇心の類の感情さえ優越感を感じていたのかな。

 はぁ、何をやってるんだろう。

 私の横をお似合いのカップルが楽しそうに通り過ぎていく。
 お似合いの大前提は、同世代ってことだ。

 頭ではとっくにわかっていることだというのに。

 
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