まだ青い彼
 唇を離すと数秒、熱を孕んだままの目で見つめられる。自分も今この子と同じ顔をしている気がする。

「止めないんだ」
「え、止める? 」
「うん。こんなとこでキスしても。怒られるかなって思ったのに」
「え、あ、ほんとだ」
「んだよ。酔ってんのそっちじゃね。だって結構ノリノ……」
「ちょっと、やめてよ! もう! 」
「ははは。まぁ、暗いし人がキスしてんのじっと見る奴いないよな。温い視線で見て見ぬふりだろ」
「確かに」
「……人前では気をつけるね」

 そう言いながら私にもう一度唇を押し付け、「多分」と付け加えた。

「ちょっともう。あなた、全然気にしてないでしょ」
「しないよ、俺は。あ、そうだ。俺、敬語で喋らなきゃなんだった」

 そう言っていたずらっ子みたいに笑う。こんな笑い方したらやっぱり随分と若い。

「いいけど、別に」
 そう言ったけど、彼は笑っただけだった。
 まだ腕に閉じ込められたままで、背中が熱い。落ち着かないんですけど、これ……。キスなんてしなくてもこの距離感は明らかにイチャイチャカップルで……。気恥ずさに口を開く。

「ねぇ、あなたの元カノ……じゃなくて元奥さんって、もしかして私に似てるたりする? 」
 ずっと思ってたこと。だから私が振っても引かずに私にこだわるんじゃないかってこと。

 ……。
 あれ?反応がない。不思議に思って振り向くと、全く考えもしなかったんだろうなっているきょとんとした表情の広睦くんの顔があった。

「全然、似てない。むしろ真逆のタイプだと思います」
「え、あ、そうなんだ」
「何でそう思ったんですか? 」

 何でって……。
 かぁ、と顔が熱くなった。
 前の彼女の面影でもあったから私に執着するんじゃない、なんて言えるわけもなく。真逆のタイプとまで言われてはますます言いにくい。
 
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