まだ青い彼
「彼女、めちゃくちゃ可愛い人で。あ、顔がね。顔がすごい可愛い人で。性格はそうだな、可愛いとはいいがたいしっかりした人だったな。頑固で、真面目で。……似てるって思ったことないな」

 この子がこんなに可愛いって言うくらいだ。相当な可愛い人だったんだろう。自分と似てるのか、なんて聞いてしまったおこがましさにますます顔が熱くなった。
 やだもう、言うんじゃなかった。
 なんで?とばかり首を傾げて顔覗き込まれると、唇を噛んで覚悟を決めた。

「忘れられない人の面影でもあるのかなって、そんな可愛い人とは思わなかったから、えっと……別に調子に乗ったわけじゃ……」

「あはは。別に調子に乗ってるとか思ってないし。向こうは単純に系統が可愛い系だったってハナシ。春美さんは綺麗系でしょ。性格は、()()()()()
「ぐっ」
 また言葉に詰まった。広睦くんと話すといつも言いくるめられたりしてやられて言葉に詰まる。
 広睦くんが笑うと触れてる私の背中が揺れる。振り向いた距離感に気づくと、恥ずかしく、いたたまれない。

「綺麗な人だなって思ったんだよ。俺にとって春美さんは春美さんです。()()()()()()()()()。だから、安心してください」
「そっか」

 不安で聞いたんじゃなくて、単に疑問だっただけ。そう思ったけど黙っておいた。わずかに、ほっとして背中から伝わる人肌の心地よさにしばらく包まれていたかったから。

 似ていなくて恥ずかしいけど、ほっとしている自分に一番驚いた。
『沼だよ、沼! やっぱり付き合う前に引くべきだったんじゃないの? 』頭の中で声が聞こえた気がした。

「わかってる、大丈夫」
 ちゃんと壁はつくってる。自分が越えないための壁。

「何が? 」
「何でもない」

 少し顔を振っただけでぶつかる距離で、私は自分から彼にキスをした。一瞬彼はビクリと揺れ、すぐに私に応え始めた。

 今だけ、今だけだから。
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