まだ青い彼
 キスが終わると、恥ずかしがるでもなく至近距離で平気で微笑む。きっと私よりこの子の方が恋愛に慣れている。

「ねえ、春美さん。他の男と会ったら俺に報告してくれるんですか」
「どんな人と出会ったか……報告した方がいいの」
「ああ、そっか。そうだなー……他の男と会う日はずっとソワソワしなきゃならないな。けど、春美さんは俺と別れる日が近いのわかってるのに俺はわかってなくて、いつも今日で最後かもしれないって思いながら過ごすのはキツイか」
「報告するよ」
「そうですね、俺もいつも今日で最後かなって思うことにします。その方が後悔なく過ごせそう」
「私も、後悔しないために、あなたと付き合うことにしたんだから」
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「広睦くん」

 満足げに頷く姿に、胸がぎゅっとなる。罪悪感による痛みだと胸を押さえた。

 そこからもうしばらく夜のライトが映る川を眺め、手を繋いで歩く。

 大した話もなく、ぶらぶら繋いだ手を振って歩く。相手に何も求めない、相手からも何も求められない関係はもう何年も前にした恋に似ていた。
 純粋に好きの気持ちだけでつき合えたあの頃の恋心。

 駅に着くと、数駅同じ車両に乗って私の最寄り駅に着くと「じゃあね」と別れた。
 ドキドキと高鳴った鼓動と昂った気持ちを抑え、これから先を考える。

 部屋に着くと、今日のデートの余韻を打ち消すようにパソコンを立ち上げる。今日反応があったマッチングアプリの人たち。優しそうだな……そう思った人にアクションを返した。穏やかで地に足がついた関係。

 自分の設定した未来に少しでも近づけるように。数年後、後悔が残っていないように。

 静かな部屋にアプリの通知音が鳴った。それから続けてもう一つ。今度はメッセージアプリが鳴った。

 『綺麗です』
 いつの間に撮ったのか私の横顔とピースサインした広睦くんの写真だった。


 

 
 
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