まだ青い彼
 キスが終わると顔を見るのが恥ずかしくてそっと俯いた。
「正直、どこまで手出していいかわかんない。これ、どこまで許されるの」

 まだ陶酔したような目で私に尋ねる。何とか留まったとばかり大きく一つ息を吐いた。

「付き合ってるんだから、普通に付き合ってる二人がするように過ごしてくれていいよ」
「うん。そっか」

 広睦くんは軽く微笑んで、身体を離した。
 この前は早急に『お泊りしよう』なんて言ったくせに今度は躊躇って、強引に進めたりしない。どういうつもり?何を考えてるの?聞いてみたいけど、私もこの子と一緒だ。未来のない関係で聞いても仕方がない、そう思ってしまった。

 関係を深める必要が無いというより、これ以上深入りしない方がいいという気持ちに似ている。これが私たちのブレーキかもしれない。

「よし、帰ろっか。今日も楽しかったです」
「あ、うん。ありがと、いつも何か、その……会いに来てくれて」
「まぁ、好きでしてることだから」
「たまには、休日に会う? 休みが合えば、だけど」
「ああ。俺、元々土曜の午後と日曜は休み」
「そうなの? じゃあ、会う? 」
「わかった。どこ行きます? 」

 いつも会うのは私の会社終わりで、悪いなって思っていたから休日のデートを申し出たけど『わかった』とあっさりした返事だった。
 “会いたい! ”とか“やった!”とか喜ぶと思っていて肩透かしを食った。

「忙しかったらいいんだよ。いつも夜に会うばっかりだからさ、って思っただけで」

 思った反応じゃなくて広睦くんが会いたいだろうと考えたのが思い込みだったみたいで恥ずかしい。

「いーや、いいよ。全然。どこ行きましょうか? 映画、水族館、買い物、遊園地、それともMt. Fuji? 」
「んふふ、ガチ登山は難しいかな」

 ちょっとばかり気を使われた気がする。広睦くんは笑った私を見て目を細めた。……時々ものすごく大人びた表情をする時がある。



 
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