未完成のワンフレーズ



「今夜が山場だろう」


一々言われなくたって分かってるよ。


集中治療室からいつもの病室に戻ってきた李仁は、私の前で静かに目を閉じていた。


「俺達はそろそろ戻る。後は二人の時間を大事に過ごすんだよ」

「⋯うん。ありがと、せんせー」


せんせーとみっちゃんが病室を出ていって、二人っきりの時間が始まる。


私はギリギリまで李仁が生きていることを感じていたくて、少し冷たくなった彼の手を強く握っていた。

ベッドに横たわる李仁の横腹辺りに頭を置くと、ほんの少し呼吸する音が聞こえる。


「結局、続き作れなかったね」


机の上には、途中で途切れた楽譜とクリスマスイブに皆で撮った写真がある。

楽しかったね。とってもとっても楽しかった。



『ねえ、李仁はサンタさんに何をお願いするのー?』


あれは、クリスマスがくるずっとずっと前のこと。


『んー⋯別に欲しいものはない、な』

『なにそれ、つまんなー』


私はねー、可愛い髪飾りとかお洋服とかー。

好きな人の前で最高に可愛くおめかしできるものがいいなー。


見せたかったもん。李仁に可愛い服を着てお洒落をしてるところ。


『⋯⋯強いて言うなら―――』


あの時、李仁は何をお願いしていたっけ。


「⋯⋯りひとぉ、起きて⋯」


起きて、また笑ってよ。

アホ面とか、泣き虫とか、意地悪なことたくさん言ってさ。


それでいつも通り喧嘩しよ。李仁が相手なら、私、何だって言えるから。


「まだ、お礼言ってないの。私、お礼が言いたいんだよ」


ありがとう、って言葉はね。


伝えたい相手が起きていて、自分のことを見てないと伝える意味がないの。
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