未完成のワンフレーズ
あ、ああそうだ。
外、外に行こうよ。
また二人でみんなにりひとの曲を聞かせようよ。
だから、そんな顔しないで。
泣きそうな、悲しそうな顔なんてしないでよ。
「李仁、どうしてここにいる」
「さ、紗綾が時間になっても来ないから気になって⋯」
「⋯⋯今日は紗綾ちゃんが戦う日だ。李仁は病室に戻りなさい」
せんせーだ、せんせーが来てくれた⋯⋯。
「せんせ……」
「どうした?」
「りひと、帰っちゃうの?」
「……今は帰ってもらう」
「やだ」
いやだよ。
帰っちゃやだ。
りひとがいなきゃ、わたし独りぼっちになっちゃうもん。
トモダチだから、りひとはトモダチだからいつだっていっしょにいるの。
「りひと、いて」
「紗綾ちゃん」
「ひとり、やだ……」
おねがい、せんせー。
せんせーもりひともここにいて。おねがい⋯⋯。
「李仁」
「⋯⋯お兄」
「少しだけなら、ここにいてもいい。ただし、無理に話しかけたり、触ったりしないこと」
「……分かった」
わたしをかこんでいた看護師たちが離れていって、
代わりにわたしの前に立ったのは、しのみやきょーだいだった。
「……紗綾⋯俺のこと、分かる?」
「……り、ひと」
りひと、わたしね。
“李仁”って名前大好きなんだぁ。
なんでか知ってる?
わたしがりひとって言うとね、
りひと、すっごく嬉しそうな顔をするから!