未完成のワンフレーズ



会えない時間が増えていって、顔を見ない日が増えていって。


どうせ今日も病室に行ったってあいつはいない。



だから、最近はギターを持って中庭に行くことが増えた。


みっちゃんから、「李仁君がギターを好きに使っていいっって」って聞いて、ギターの持ち出しを許可してもらったのだ。




「あっ! 紗綾姉だ! 今日もギター弾くの!?」



いつも通り中庭の芝生に座って楽譜を広げていると、

ここでギターを弾くようになってから知り合ったガキンチョ達が走り寄ってきた。


この子達もこの総合病院に入院している患者。

それも、身体中に病気という爆弾を抱えた子達。



「ほーらガキンチョどもぉ! 今日も紗綾姉のゲリラソロライブ始まるよー!」

「わーい! 急げ急げ!」

「わたしが真ん中座るの!」

「紗綾姉の前は僕が座るんだ!」



子供達は私のことを「紗綾姉」と呼んで甘えてくる。それが弟や妹ができたようで悪い気はしなかった。




「―――」



どれだけ騒がしい子供達でも、私が一度ギターを弾き始めれば静かに聞き入ってくれる。

中には眠りだす子もいて、それすらも可愛らしくて笑みが零れる。


けれど、近頃子供達からの質問攻めが増えた。



「ねーねー、どーしていつも同じ曲ばっか弾いてんのー?」

「さぁ、なんででしょう」

「分かんないからきーてんのー。おしえてよー!」



なんでなんだろうね。

単純にこの曲しか知らないからってのもあるけど⋯⋯。




「この曲が好きだからだよ」



生意気で、意地悪で、大嫌いな人が作った、


大好きな曲。

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