未完成のワンフレーズ
「―――ちゃん、⋯⋯や、⋯紗綾ちゃん!」
はっと意識が晴れた。
ずっとぼんやりとした意識だったのが、今じゃやけに鮮明で。
視線を巡らせると、何故か四宮せんせーとタケちゃんが私の顔を覗いていた。
二人してやけに焦った表情をしてる。
私の前でそんな顔するなんて、珍しいね。
「紗綾ちゃん、俺達が分かるかい?」
「⋯⋯せ、⋯け⋯⋯ちゃ⋯⋯」
なんでだろう。
上手く言葉が出てこない。と言うか、口は動かないし声が出しづらい。
「解離性昏迷⋯か?」
「一概にそうとは言えないが、その可能性はある」
「⋯⋯こん、め⋯⋯?」
解離性昏迷。
意識があるにも関わらず、光や音といった外的刺激に対する反応が弱まり、長時間寝たままか座ったままの状態を示す。
「せんせー、何があったの?」
「珍しくいつも起きている時間になっても寝ているから、タケちゃんが起こしに行ってくれたんだ。そしたら、目は開いているし呼吸もしているのにこちらの呼び掛けに一切応じなかった。俺が呼ばれて来てみれば、紗綾ちゃんは天井を見つめたまま身動き一つ取らなくてな」
それで、解離性昏迷という状態に陥ったのではないか――。
四宮せんせーは、横たわったままの私の頭をそっと撫でてくれた。
「にしても、近頃やけに多くないか」
「この間も重度の人格交代が起こった。その度に健忘も見られている。紗綾ちゃん、何か普段と違うことが起こったりしていないか?」
普段と違うこと、違うこと⋯⋯。
「⋯⋯夢、見た」
「夢? どんな?」
誰も来てくれなかった寂しい夢。
頭が痛くて、身体が震えて止まらないのに、誰も。
おかあさんが来てくれなかった夢。