未完成のワンフレーズ



「ねえ、李仁」



私の手を掴む李仁の手が震えている。

伏せられた彼の顔がどうなっているのか分からない。


肩が小刻みに震えているのを見ても、私は写真を手放す気にはなれなかった。




「この写真の中の私は……誰? なんで私は、こんな顔をしてるの? なんであんたは、そんなに笑ってるの?」

「……それは」



なんだか責めているみたいだなぁ⋯⋯。


たまに病院の中でも見るんだよね。見舞いに来たお母さんが治療を嫌がる子供を叱るとこ。


生きるも死ぬも、

何をするも本人の勝手なんだから、選ばせてあげたら良いのに。


まあ、それが無理だから親も必死なんだけど。



「俺が、一番見たかった景色だから」

「……え?」



掴んでいた手を離して、顔をあげた李仁の目には薄っすらと涙が浮かんでいた。



「お前が笑ってて、皆が生きてて」



私の手の中にある写真に視線を移したかと思えば、次は両手で私の手を握った。



「俺も、ちゃんと笑えてる⋯そんな未来を、もう一度見たかった」



握った私の手を額に当てる姿は、神様に祈る子供みたい。


自分じゃどうにもできないから、神様に縋るしか無い。そんな、可哀想で哀れな人間。



「……もう一度?」


もう一度、って何?


その言い方、過去にもあったってこと? こういうことが?



「今の、どういう意味?」

「…………」

「李仁」

「……紗綾。もし」



李仁はそこで一度、言葉を飲み込んだ。



「もし俺が、お前と初めて会ったんじゃなかったら……どうする?」

「……何、それ」

「ただの仮定だ」


そう言うにはあまりにも突拍子が過ぎるよ。


私達、まだ中学生だよ?

李仁がそんな事言うにも、私が理解するにも壮大すぎるよ。


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