未完成のワンフレーズ
「李仁は、今は集中治療室にいる」
「⋯⋯生きてる?」
「ああ」
そっか、それなら良かった。
李仁、まだ生きて。生きていて。
「会いに行っても良い?」
「中には入れないぞ」
「それでもいい。顔、見たい」
「分かった。起き上がれるか?」
前の私はね、李仁が死んじゃうかもって思うと顔を見るのも怖くて。
会うのを避けたりなんかしちゃったんだよ。
でもね、中庭で子供達に囲まれながらギターを弾いている姿を見て、
生きてるんだって感じられてさ。
こいつ、死んだりなんかしないんじゃないかとか思っちゃったりして。
「⋯⋯馬鹿、だなぁ⋯私⋯⋯」
しんどいなら言ってほしかった。
辛いなら無理に歌わないでほしかった。
痛いよね。苦しいよね。
たくさんの管を繋がれて、広い部屋に独りぼっちで。
「り、ひと⋯⋯私、いるよ⋯ここに、いる⋯⋯」
前は気づいてくれたのに、鼻血が止まらなくて苦しくても気づいてくれたのに。
今は、目も開けてくれないんだ。
「せんせー、あとどれくらい保つ? あと、どれくらい⋯一緒にいられる?」
違うのせんせー。
今は頭を撫でてほしいんじゃない。肩を抱き寄せてほしいんじゃない。
ただ、教えてほしいの。
李仁は生きられるのか。
もう一度笑えるのかどうかを教えてほしいの。
「まだ、ね⋯曲、完成してないんだよ⋯⋯私、続き⋯知らない」
私だけじゃない。
せんせーだって、李仁が作った曲の続きを知らないでしょう?
どうしてかは分かんないけど、いつも聞いてるはずなのに歌詞が思い出せないの。
何を想って、何を描いて、誰に向けている歌詞なのか分からないの。
思い出せるのは、いつも李仁の歌声だけ。