【続編】ふたりの恋のそだてかた。
Ep.17 一滴の劇薬
SIDE:瀬名爽真
6月4日。11:00。
広い撮影スタジオには、いくつものセットが組まれている。
カフェの倉庫、美咲とその婚約者・矢野 大翔が暮らすアパート、侑征の一人暮らしのワンルーム。それから、大翔の勤め先のオフィス。
――それぞれ別の生活空間が、巨大な箱の中に隣り合っていた。
どこかに実在する空間を一部切り取って持ち込んだかのような光景に、ドラマの舞台裏を初めて目の当たりにする俺は少し不思議な気持ちになった。
「シーン12、始めます。よーい……ハイ!」
メガホンを通すくぐもったハジメさんの声。
今撮っているのは、大翔と疑惑の浮気相手が登場するオフィスシーン。
スタジオの隅に置かれた簡易テーブルの一席について、今日の自分の出番分の台本を確認していると――
「瀬ー名ーくん」
肩口にぽんと華奢な腕が乗ってきた。
「……。毎回話しかける時に距離近いの、やめてください」
音を立てないように椅子を反対側に引いて、御伽蘭子から距離を取る。
御伽蘭子は少しも気にしない様子で、開けた距離の分だけ椅子を詰めてきた。
「初ねぇ。今日はキスシーンもあるのに。
そんな調子で大丈夫〜?」
くすくすと子どもを揶揄うような態度に、苛立って眉が寄る。
「それとこれとは別です。役で絡むからって、裏でまで同じ距離感でいる必要ないですよね」
6月4日。11:00。
広い撮影スタジオには、いくつものセットが組まれている。
カフェの倉庫、美咲とその婚約者・矢野 大翔が暮らすアパート、侑征の一人暮らしのワンルーム。それから、大翔の勤め先のオフィス。
――それぞれ別の生活空間が、巨大な箱の中に隣り合っていた。
どこかに実在する空間を一部切り取って持ち込んだかのような光景に、ドラマの舞台裏を初めて目の当たりにする俺は少し不思議な気持ちになった。
「シーン12、始めます。よーい……ハイ!」
メガホンを通すくぐもったハジメさんの声。
今撮っているのは、大翔と疑惑の浮気相手が登場するオフィスシーン。
スタジオの隅に置かれた簡易テーブルの一席について、今日の自分の出番分の台本を確認していると――
「瀬ー名ーくん」
肩口にぽんと華奢な腕が乗ってきた。
「……。毎回話しかける時に距離近いの、やめてください」
音を立てないように椅子を反対側に引いて、御伽蘭子から距離を取る。
御伽蘭子は少しも気にしない様子で、開けた距離の分だけ椅子を詰めてきた。
「初ねぇ。今日はキスシーンもあるのに。
そんな調子で大丈夫〜?」
くすくすと子どもを揶揄うような態度に、苛立って眉が寄る。
「それとこれとは別です。役で絡むからって、裏でまで同じ距離感でいる必要ないですよね」