【続編】ふたりの恋のそだてかた。
しかも目の前に見える表情は、不気味でも軽薄でもなく、親が子を見るかのような温度感に見える。


「――……ありがとうございます……」


胸に一滴、何かが落ちる。じわりと言い表しがたい、温い感覚。

「素直でよろしー。でも香月式も今まで通り取り入れていいと思うよぉ。
見せ方とか感情表現とかの基礎押さえられるし。瀬名くんの演技の未熟をカバーするテクニック多いからねぇ」

指先で緑茶の入った紙コップをぶら下げてゆらゆらと揺らしながら、御伽蘭子はまだ真面目そうな顔をしている。

得体の知れない怪物に見えていたのに、今は少しだけ人間に見える。


(それに……なんだ?どうしてか、瑠奈と重なる)

演技のことになると怖い顔して、ズバズバものを言ってくる瑠奈。

ぼーっとどこを見ているのかわからない表情で緑茶を飲む横顔は少しも似てないのに――なんで今、そう思った?

「そいえば香月瑠奈ちゃん、映画出るんだって〜?
ネットニュース見たよぉ。ディザービジュアル、いい感じだったね〜」

ぴたり。
思わず疑問も表情が止まって、僅かに瞼が落ちる。

昨日の帰り際、瑠奈が今日情報解禁されるって言っていたから、その情報は知っている。
でも、まだ見てはいない。朝から仕事だったし、見るのには少し覚悟がいるから。

御伽蘭子はそんな俺にお構いなしでスマホを取り出して、画面を操作している。

「原作知らないけどぉ、相変わらず完璧に擬態してるねぇ。CGとか、AI生成してるみたいだよね〜」

ほら、とこっちに向けてきた画面に、役に扮する瑠奈の画像。
儚げで、少し幼くて、真面目そう。

瑠奈が言っていた通りの、教室の隅っこ系女子そのものだ。

「――……」

吸い込まれるような澄んだ視線に、目を奪われる。

やっぱり瑠奈はすごい。
誰よりも綺麗で、気高くて、完璧な女優だ。
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