【続編】ふたりの恋のそだてかた。
――――
――……
いくつものシーンの撮影を終えて、ようやくの待ち時間。
御伽蘭子は婚約者との撮影シーンに出ていて、ひとりでまともな休憩と思っていたのに――

場面転換の隙に、御伽蘭子が颯爽と歩いて近寄ってきた。


「おつかれ〜瀬名くん。やっぱり慣れてきてるねぇ。
自分の感情を役に流し込む演技」


パイプ椅子に座る俺の肩に正面から手をかけて、もう片手で顎を掬ってくる。

婚約者役の俳優にもカット後わざわざ腕に絡んでたし、この人の距離感はこれが標準仕様みたいだ。

「それは……御伽さんのおかげでもあるので。
ありがとうございます」

顎に触れる手を払うように顔を背ける。
御伽蘭子は一瞬きょとんとするも、すぐに緩い笑顔に戻る。

「おやおや?殊勝だねぇ。
侑征を想像させる時、いっつも苦しそうな顔してるのに。ついにハマっちゃった?」


(……この人、やっぱり苦手だ)


悪戯に人の感情に触ってくる上に、楽しそうに煽ってくる。
才能も指導力も本物なのに、そこだけは受け付けない。

「……ハマってはいません。ただ、色がないとか感情がないとかそんな理由でNG出すことは減ったので。そこに感謝してるだけです」

「つれないなぁ。けど、ほらね?
やっぱり瀬名くんはこっち側なんだよ」

「……それ、前から言ってますけど、こっち側ってどっち――」

「あっそういえばぁ。香月瑠奈ちゃん」
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