【続編】ふたりの恋のそだてかた。
「えぇ?それは瀬名くんの情が動く話題が、香月瑠奈ちゃんのことしかないからだよ」
「……!」
当たり前のように淡々と告げられた言葉に、思わず見開いた目が揺れる。
御伽蘭子がふわりとウェーブかかった長い髪を手で払うと、麻薬みたいな甘い香りが鼻を掠めた。
「瀬名くんさ。今後俳優としてやってくなら、もっといろんな世界に目を向けたほうがいいよ。元々は感情、動きにくいタイプでしょ?
時事ニュースとか文学作品とかに触れて、感情を持つ訓練をしたほうがいい」
正論だし、当たってる。だから、何も言えない。
「いろんな人とも積極的に関わるべきだよ。侑征役は偶然今手元にある感情がハマってるからいいけど――
他の役が来た時に、今のままじゃ対応できないよ」
「……俺は別に他の役とかやる予定も気も、まだ」
この役だって、瑠奈に勧められたから試しにやったくらいなのに。
「ううん、演る。このドラマで、君は跳ねる。
その時に備えて、準備はしたほうがいい。それに、」
妙に確信的な断言と、一切の迷いのない目に飲まれそうになる。
本当に次がある気も受ける気もしてないのに、予感だけは持たされる。
「香月瑠奈ちゃんは、盲目的・依存的に愛されることを望むタイプではないと思うけど」
――胸が、軋む。
この人は、何をどこまでわかってそんなことを言っているんだろう?
「――そんな、こと。わかってます……」
本心なのに、声が上手く出ない気がした。
目も合わせられないまま、それでも頷いた俺に御伽蘭子は満足そうに笑みを深める。
「うん。じゃあもっと世界を広げよう。
まずはこの作品から。彼女が君に興味を持つくらい、深ぁく潜ってみようね」
毒みたいな、静かで甘い囁き。
翳る目に、この時だけは首元に回る手を拒むほどの気力はなかった。