【続編】ふたりの恋のそだてかた。
「なんで今日は凹んでんの?」
耳にかかる髪を貫通して、直接鼓膜を揺する声。
すでにバクバクいってる心臓が、きゅんときつく締め上げられた。
「ひ、……久々にNG連発しちゃって……。事故って抱きついちゃうシーン、綺麗すぎて人間味がないって言われて……」
「ふーん。抱きつくシーン」
ふーん、の声が低い。
あれ、これ尋問されてるの?話を聞いてもらってるの?どっち?
自分の感情もわからなくなってきたドキドキが、目を泳がせる。
感覚も麻痺してきた気がして、夕飯の匂いが消えた。
紫苑の残り香なんて当たり前に飛んで、石鹸――爽真の香りしかしない。
「い、いろいろ表現変えたんだけど、上手くハマらなくて。最終的に台詞飛ばして、結局できなくて……こんなの久しぶりだから、ショック過ぎて」
思い出したらちゃんと凹んできた。
自分の情緒が忙しくて、訳がわからない。
「妥協テイク採用なんて絶対嫌だったのに!
でもリテイクする隙間があるかもわからないし、あったとしても解決策がわからないし——……!」
ぐちゃぐちゃの感情を、とにかく口に出して吐き出す。
いつの間にかちゃんと心配一色の顔になっていた爽真が腕を解きかけたのを、阻止してそこにぎゅっとしがみついた。