【続編】ふたりの恋のそだてかた。
「……お?誰かきたぁ」


ゆるりと気怠く机に頬杖をつく女。
真ん中分けのボルドーのウェーブ髪が、傾いている顔に一筋垂れている。
とろんとしたタレ目に、厚い唇を持つその顔は、好意的なのにどこか危うい緩い笑みを浮かべている。

そんな独特の湿っぽい雰囲気を持つ割に、服装は量産型のシアーシャツに細身のパンツ――
台本で見た、美咲のイメージに近い装いだった。

「――……」

言葉を、失う。
隣にいた三木さんも惚けた顔をして、少ししてからハッとしたように名刺を取り出し始める。

「失礼しました!私、アークプロの三木と申します。
ほら、爽真。挨拶しなさい!」

言われて俺も我に帰る。

反射的に言葉を発しようとした時――


“雰囲気!徹底!” “舐められるな!”


瑠奈の刺すような声が蘇ってきて、目の奥に力を込めると同時、ほんの少しだけ肩の力を抜いた。

「……瀧本侑征役の、瀬名爽真です。
よろしくお願いします」

“焦ってペラペラ喋るより、堂々と端的に礼儀正しい方が爽真には合う”

瑠奈に言われた通り、毅然として浅く礼をする。

闇が深そうな気怠い鳶色(とびいろ)の目が、そんな俺を品定めするように捉えた。

「はぁ、瀬名くん。君が私の相手役かぁ」

にいっと薄桃色に塗った唇が、妖しく吊り上がる。
カタンとほとんど音も立てずに女は椅子から立ち上がると、ゆっくりと余韻を残しながら俺の目の前まで歩いてきた。

「ふんふん、なるほどぉ。確かに確かに。これは“侑征”だ」

つま先が触れ合いそうなほど近くに立って、余裕な顔で俺を見上げる。
妖しげな雰囲気とは裏腹にその目に色はなくて、“観察”と言う言葉がピタリとハマる視線だった。

「――でも、ちょぉっとなぁー……」
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