【続編】ふたりの恋のそだてかた。

ぬるりと、唐突に整った深爪の手が伸びてくる。
咄嗟に反応できず、頬を指でなぞられた。


「侑征にしては“闇”が足んないかなっ?瀬名くん」


ぞくりと戦慄にも似た感触が走って、思わず半歩後ろに引く。
それを見た女は可笑しそうにクスリと笑って、大きく一歩後ろに下がった。

「あぁ、そうそう。申し遅れました。
私(わたくし)――」

妖しい微笑みが、一瞬で雰囲気を変える。

目?口元?眉?
どれかわからないけれど、優しげでどこか脆そうな真面目な笑顔になる。
だらんと肩の落ちた立ち姿も、ふっと自然な姿勢になって――

「加賀屋 美咲役の、御伽 蘭子です」

目の前に美咲が現れた。

衝撃の連続に、現実味が湧かず混乱する。
アオバケで初めて瑠奈を見た時の衝撃とも違う、底知れない気味の悪さ。

“蘭子さんの演技はすごいの。役というよりその人そのものになってるみたいな生感!”

“驚異の超実力派カメレオン女優”

(瑠奈が興奮気味に語ってた根拠がわかった。
これは――圧倒的だ)

ドラマも映画もそんなに観ないし、瑠奈みたいに演技に詳しいわけでもない。
それでも肌で思い知らされる、唯一無二の才能。


(こんな化け物みたいな人と肩を並べる?
……できるのか?俺に)

息を呑むことすら躊躇われる、なんとも言えない空気。
けれど動揺も弱気も“瀬名爽真”には許されないから、飲み込んで平静を保つ。

「あ、ちなみにね。24歳。
年下の子との恋仲役は初めてだから、緊張しちゃうな。よろしくね」

「……はい、よろしくお願いします」

これは、先が思いやられる。
後に控える出会いも重いものばかりなのに、すでに元々ない自信が揺らいできた。
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