【続編】ふたりの恋のそだてかた。
「いつも通りの爽やかくん役でも、香月さんとなら化学反応を起こせる。
そう期待して、香月さんを相手役に選んだの」
――これは演者として、とても好戦的な誘い。
この胸の高揚感は、女優・香月瑠奈としてのときめきだ。
「……あ、時間。ごめんね、次のスケジュールあるから行かないと。支払いしとくから、ゆっくりしてって」
立ち上がりかけた紫苑に、すぐに財布を取り出して千円札を2枚出してテーブルに置く。
こんな高そうなカフェの値段知らないから、とりあえず、テキトーに。
「いい。奢られる理由ない。
……次会うまでに私、ちゃんと仕上げとくから。
成宮紫苑、覚悟しといて」
メガネとマスクをつけていた紫苑が、きょとんとして私を見下ろす。
少し間を置いて、可笑しそうに笑った顔はやっぱりどこか幼かった。
「やっぱいいね、香月さん。
とりあえず、一枚だけもらっとく。足りなかったら今度請求するから」
テーブルの上からお札を一枚だけ受け取って、紫苑は颯爽と帰っていく。
ずるりと背もたれに溶けて、冷めた紅茶を一口飲んだ。
(爽真はもう、顔合わせ終わったかな……)
あと引く余韻と、帰りたくなるような疲労感。
すべてが走り出した感覚に、ぼんやり天井を眺めていた。