【続編】ふたりの恋のそだてかた。
予定時間が近づくにつれて、キャストや制作陣が集まり出す。
15分前。
会議室の空気がガラリと変わった。
隣り合った共演者の子と談笑していると、
ガチャ、と控えめにドアが開く。
スタッフが走ってドアを開けに行くと、その人は恐縮しながらも当たり前のようにそれを受け入れて中に入ってくる。
圧はないのに、空気がそこに引き寄せられる。
さっきまで楽しく喋っていた子が、わぁっと小さく息を呑んで頬を赤らめた。
「おはようございます。朝倉湊役、成宮紫苑です。
本日から、よろしくお願いします」
ぶわっと吹き抜ける新緑の風。――と、いう錯覚。
甘いマスクは甘さ控えめですっきり爽やか。朝にちょうどいい塩梅。
私の演出が“新人感”なら、あっちは“旬のスター感”。
バチッと目が合うと“相変わらずやってんな”って、念を受け取りあった気がした。
「紫苑くん、久しぶり。
一年半ぶりくらいかな?もうすっかりスターだね」
唐突に立ち上がって、気さくにスターの元へ駆け寄る。
本当はこの間再会してるけど。
この場においては、変に継続的な関係を匂わせない方が都合がいい。
「やめてよ瑠奈ちゃん。そう言われるの苦手なんだから。
瑠奈ちゃんこそ、ちょっと大人っぽくなったんじゃない?あれだ、髪型。だいぶ違う」
紫苑は自分の毛先を指先でちょっと持ち上げて、ハーフツインっぽいシルエットを作る。
「紫苑くんこそやめてよ。あれはもうできないから」
「そうかな?まだイケそうだけど」
和気藹々。
アオバケでは見せなかった、“瑠奈”と“紫苑”の友達っぽい親密さ。
多分アオバケ視聴者だったらしい人は純粋に驚いているし、知らない人も映像業界の新人と売れっ子が初日から仲良くしている場面に呆気に取られている。
表向き、私は紫苑を騙していたことになっているけれど、そもそも裏では素を見せて友人として仲良くしている側面もあった――という、業界向けの建前だ。