世界で一番わがままな君とガラスの心臓
明日(みらい)なんていらない
薬を飲み、横になってから三十分。
荒かった明日の呼吸がようやく静かなリズムを取り戻した頃には、庭の青もみじはすっかり濃い紫色の影に飲み込まれていた。
海を染めた夕陽の名残が、障子越しにほの暗い橙色の光を投げかけている。
「……ごめんね、明日。私、バカなこと言った」
布団の傍らに座り込み、私は膝の上で固く拳を握りしめていた。
明日は仰向けのまま、天井の木目をじっと見つめている。前髪に張り付いていた汗は乾き、その顔立ちは一層白く、浮世離れした人形のように見えた。
「……謝らないでよ。惨めになるって言ってるでしょ」
少し掠れた声で、明日は呟いた。
起き上がれるようになった明日はゆっくりと体を起こし、部屋の障子窓をすっと引いた。
茅野家の二階からは、旧市街となまこ壁の瓦屋根が立ち並び、その向こうには、夕闇に沈みゆく静かな海と、ぽつんと浮かぶ弁天島の小島が一望できた。
部屋にこもりきりの明日は、いつもこの小さな四角い窓枠から、外の世界を見つめていたのだ。
荒かった明日の呼吸がようやく静かなリズムを取り戻した頃には、庭の青もみじはすっかり濃い紫色の影に飲み込まれていた。
海を染めた夕陽の名残が、障子越しにほの暗い橙色の光を投げかけている。
「……ごめんね、明日。私、バカなこと言った」
布団の傍らに座り込み、私は膝の上で固く拳を握りしめていた。
明日は仰向けのまま、天井の木目をじっと見つめている。前髪に張り付いていた汗は乾き、その顔立ちは一層白く、浮世離れした人形のように見えた。
「……謝らないでよ。惨めになるって言ってるでしょ」
少し掠れた声で、明日は呟いた。
起き上がれるようになった明日はゆっくりと体を起こし、部屋の障子窓をすっと引いた。
茅野家の二階からは、旧市街となまこ壁の瓦屋根が立ち並び、その向こうには、夕闇に沈みゆく静かな海と、ぽつんと浮かぶ弁天島の小島が一望できた。
部屋にこもりきりの明日は、いつもこの小さな四角い窓枠から、外の世界を見つめていたのだ。