君が感情をくれたから
 「じゃあ、次の場所を案内するね!」
 「よろしくお願いします」
 私達は図書室をあとにして、次の場所へ向かっていた。
 静海くんは無表情に戻っていた。
 「次に行く場所はね、私のお気に入りの場所なんだ!」
 「そうなんですね・・・」
 「うん!すごく綺麗な場所なんだよ。だから、静海くんも気に入ってくれたら嬉しいな」
 あの場所は、落ち込むことが出来たときに行くと元気になれるし、頑張ろうって思える。
 「もう着くよ!ほら、綺麗でしょう?」
 私が静海くんを連れてきた場所は裏庭だ。
 裏庭には沢山の花壇が設置してあり、色んな種類の花が咲き乱れている。
 入学初日に見つけたこの場所は、毎日と言っていいくらい来ている。
 「・・・」
 静海くんは、花壇を見たまま黙ってしまった。
 もしかして花は嫌いだったかな・・・?
 「・・・静海くん」
 声を掛けたけど静海くんは立ち尽くしていた。
 「静海くん・・・どうかした?」
  もう一度声を掛けると、花に目を向けたまま「大丈夫です」と返ってきた。
 ずっと花を見てるってことは、もしかして花も好きなのかな・・・?
 だったら、私と同じだ・・・。
 昔から花は好きだった。
 綺麗で可愛くて、小さいからで頑張って成長してると思うと愛おしく思えた。
 「静海くんもお花、好き?」
 そう問うと、彼は「どうでしょうね」と答えた。
 花が好きな訳じゃないのか・・・。
 「じゃあ、何でそんな真剣に見てるの?」
 「綺麗なところを知りたいからだと思います」
 「だったら、私が教えてあげるよ」
 「ありがとうございます」
 私達は近くにあったベンチに腰掛けた。
 「花はね・・・

 私は予鈴が鳴る直前まで静海くんに花の魅力を話し続けた。
 「花が好きなんですね・・・」
 話し終わって、から静海くんから出てきた最初の言葉はそれだった。
 「うん、好きだよ!学校に来る理由もここの花を眺めたいってのもあるかも・・・」
 「・・・そうなんですね」
 静海くんは、どこか遠くを見ていた。
 「私の話、つまらなかった?」
 そう聞くと、彼は首を横に振った。
 「そんなことはないです。少し、思うことがあっただけで・・・」
 「そう・・・」
 思うことって何だろう・・・?
 静海くんのことは相変わらず分からない・・・。
 でも、知れたこともあった。
 静海くんは本が好きだ。
 そして、常に無表情だ。
 これは、笑わせるのが難しそうだ・・・。
 それに、お友達にはなったけど静海くんは私と敬語で話している。
 タメ語で良いのに・・・。
 名前だって、好きに呼んでいいって言っていたけど、さん付けはやめてほしい。
 みんな「彩葉」って呼ぶから変な感じだ・・・。
 「ねぇ、静海くん。タメ語で話そうよ」
 顔をグイッと近づけてそう言う。
 「どうしてですか?」
 静海くんは私と少しだけ距離をとって聞いてきた。
 「だって、友達で話すものでしょ?」
 「・・・」
 「ね?」
 「・・・」
 「お願い!」
 「・・・分かりました。ただ、不快だったら言ってください」
 「やった」
 思わずガッツポーズをしてしまった。
 「じゃあ、それに伴って花﨑さん呼びも終了ね!」
 「えっ・・・」
 「そーゆーことでよろしく!」
 「・・・」
 静海くんが何か言いたげな顔をしていたけど、結局何も言わなかった。
 それより、歌を歌い出したいくらい良い気分だ・・・。
 ーキーンコーンカーンコーン
 ちょうど良いタイミングで予鈴が鳴った。
 「早く行こう、凪くん!授業に遅刻しちゃう!」  
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