海から届いたお守り
荷物を運び終えると、家の中が少し賑やかになった。

樹がいる。

碧がいる。

いつもより、家の中に人の声が多い。

凪沙は、そんな空気がなんだか嬉しかった。

夕方、三人でお茶を飲んでいると、碧が凪沙を見て笑った。

「凪沙ちゃん、今日は楽しそうね」

「うん」

凪沙は素直に頷いた。

「樹くんが家に来てくれたおかげで、楽しいよ」

樹が少し照れたように笑う。

「そう?」

「うん」

凪沙は少しだけ考えてから、碧を見る。

「私ね……お母さんがいないから」

その言葉に、碧の表情が少し変わった。

凪沙は慌てて付け足す。

「でも、寂しいっていうより……」

碧の顔を見ながら、笑った。

「樹くんのお母さんが来てくれて、お母さんになってくれたみたいで嬉しい」

「凪沙ちゃん……」

碧は少し驚いた顔をして、それから優しく笑った。

「じゃあ、ここにいる間は、遠慮しないで甘えていいからね」

凪沙の目が少し潤む。

「……ほんと?」

「もちろん」

樹が横から口を挟む。

「じゃあ僕より甘えすぎないでよ」

「何それ」

凪沙が笑う。

「樹くんだって甘えていいんだからね」

「僕はいいよ」

「なんで?」

「もう子どもじゃないし」

碧が二人を見て笑った。

「二人とも、まだまだ子どもでしょう」

「えー」

二人の声が重なる。

家の中に笑い声が広がった。

凪沙はその声を聞きながら思った。

家に帰ってくると、誰かがいる。

「おかえり」と言ってくれる人がいる。

それだけで、いつもの家が少し違って見えた。

海のそばの家に、山から来た親子が暮らし始めた。

そして凪沙にとっても、新しい家族のような時間が始まろうとしていた。
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