愛される星
「さぁ、しぃちゃん。
もう一曲唄う時間だよ。」
そうママに促されてステージへと向かう。
私が唄う歌は寂しい歌だ。客の様子を見ながら、時々盛り上げる歌を唄う。時々悲しい歌を唄う。
けれど今夜は悲しい物語を唄いたい気分だった。
小さな店のわりに客は入る。
バンドのメンバーはサラリーマンだったり、孫がいる人だっている。
みんな、若い頃の夢を捨てられないんだと言っていた。
この店に来る人々は、みんなどこかそんな想いを持っている人なのかも知れない。