幼なじみからの独占愛に、もう逃げられない

嫉妬した王子は、甘さが止まらない

 次の日の朝。

 教室に入った瞬間、わたしはぴたりと足を止めた。

「え……」

 自分の机の上に、小さな紙パックのいちごミルクと、可愛い包装の焼き菓子が置かれていたから。

 しかも、その横には見覚えのある綺麗な字でメモが添えられている。

 朝ごはん、ちゃんと食べてないだろ。これ食べてから一日始めて。

 胸が一気に熱くなる。

 こんなの、誰が置いたか考えるまでもない。

「おはよ、結愛」

 後ろから聞こえた声に、わたしは勢いよく振り返った。

 そこには、いつも通り爽やかな笑みを浮かべた咲也が立っていた。
 その顔は完璧で、やさしくて、昨日あんなことを言った人には見えない。

「……これ、咲也?」

「なにのこと?」

「机の上の」

「ああ。見ればわかるでしょ」

 さらっと認められてしまって、余計に恥ずかしい。

「こんなのいいのに」

「よくない。結愛は放っておくとすぐ自分のこと後回しにするから」

 そう言って、咲也はわたしの髪をふわっと撫でた。
 朝からそんなことをされて、心臓がもたない。

「ちゃんと食べて」

「……うん」

「偉い」

 子どもに言うみたいな言い方なのに、声が甘すぎて困る。

 しかも、そのやり取りを見ていたクラスの女子たちが、ひそひそと騒ぎ始めていた。

「神谷くん、今日も七瀬さんにだけ甘い」

「もうあれ付き合ってるみたいじゃない?」

 その言葉に、ぼんっと顔が熱くなる。

 咲也は気にした様子もなく、わたしの前の席に軽く腰を預けた。

「結愛」

「な、なに」

「昨日のこと、忘れてないよね」

 低く落ちた声に、どきっとする。

「……忘れてない」

「ならよかった」

 咲也は満足そうに目を細めた。
 その顔が、ひどく余裕ありげで悔しい。

 わたしばっかり意識してるみたいだ。
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