ノンデリ男の敗北 ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~
部屋に着いて買ったものを冷蔵庫へ入れると、卵は一個しか残っていなかった。
「買ってよかったね。」
「凛がいてよかった。」
「卵の数くらいは把握しておいて。」
ひとまずお茶を淹れて、ソファに並んだ。
何を見るか相談していたはずが、今週の仕事の話にそれて、気づけば昼が近づいていた。
凛が袖をまくって、キッチンに立った。
俺も手を洗って、その横に並んだ。
まな板を置く場所は一つしかなくて、凛が玉ねぎを切る間、俺は鶏肉のパックを持って待っていた。
「夏樹くん、お皿を出しておいて。」
「了解。」
皿を二枚出して、スプーンを並べた。
いつもならフライパンから直接食べる日もある、とは言わなかった。
玉ねぎを炒め始めると、部屋の中が一気に昼飯の匂いになった。
「もう、うまそう。」
「まだ玉ねぎだけだよ。」
「でも絶対うまいじゃん。」
「焦がさなければね。」
慌てて木べらを動かすと、隣で凛が笑った。
チキンライスを皿に盛って、最後に卵を焼いた。
俺の担当した一枚は、皿に移す途中で真ん中が破れた。
「あ。」
「ケチャップで隠せるよ。」
「じゃあ、こっち俺の。」
「どっちでもいいのに。」
凛はそう言いながら、破れたところにケチャップをかけた。
ごまかすつもりだったはずが、余計に目立っていた。
「……なんか、負傷してる。」
「夏樹くんが破いたんでしょう。」
向かい合って食べると、見た目のわりにちゃんとうまかった。
「また作ろうな。」
「次は卵、夏樹くんが二枚とも焼いてね。」
「練習させられるやつ?」
「上達できるよ。」
次もここで一緒に作る。
凛が当たり前みたいにその話をしたのが、嬉しかった。
◇