ノンデリ男の敗北  ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~

第39話「うまくいかなかった日にも、会いたかった。 」

年が明けてから、仕事帰りに待ち合わせるのが少し難しくなった。
昼休みに届いたメッセージに、夜になって返すことも増えた。

一月の金曜日。
俺の部屋に来た凛は、コートを脱ぐとソファに腰を下ろした。
いつもなら鞄から取り出す本も、その日は出てこなかった。

「飯、うどんでいい?」

「うん。ありがとう。」

冷凍うどんを鍋に入れながら、振り返った。

「仕事、忙しかった?」

「……うん。確認した書類を先輩に見てもらったんだけど、直すところが多くて。」

凛は膝の上で指を重ねた。

「時間をかけたのに、見当違いのところを気にしてたみたい。」

「でも、一年目なんだし――」

言いかけて、口を閉じた。
凛はまだ、何か話そうとしていた。

「……ごめん。それで?」

「次は先に聞こうって思ったんだけど、何から聞けばよかったのか、帰り道でも考えちゃって。」

鍋の火を弱めて、続きを聞いた。
俺ならこうするかも、とは思った。
でも凛の仕事を、俺は詳しく知らなかった。

「そっか。それ、帰ってからもしんどいやつだな。」

「……うん。今日は、ちょっと疲れた。」

そう言って、凛はようやく背もたれに体を預けた。

うどんを並べると、湯気の向こうで目を細めた。

「卵、入れてくれたんだ。」

「二個にする? 俺、疲れたとき二個入れるから。」

「それは、夏樹くんがお腹すいてるだけじゃない?」

少し笑ってくれたのが嬉しかった。

食後は、隣でテレビを見ていた。
しばらくすると、肩に小さな重みが乗った。

「眠い?」

「少し。このままでいい?」

「いいよ。」

声を落として返し、テレビの音量も二つ下げた。

◇
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